「6,800万円の土地」一度は購入決めたが…買主「手付金は放棄するから購入やめたい」→裁判所が認めなかったワケ【弁護士が事例解説】

「6,800万円の土地」一度は購入決めたが…買主「手付金は放棄するから購入やめたい」→裁判所が認めなかったワケ【弁護士が事例解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産の売買契約では、「買主が手付金を放棄する」または「売主が手付金の2倍を返却する」ことで契約を解除できるのが一般的です。しかし、買主が「手付金を放棄する」としているにもかかわらず、契約を解除できない場合も。いったいなぜなのか、弁護士の北村亮典氏が、実際の判例をもとに解説します。

売買契約締結後「やっぱりやめた」は通用する?

【土地の売主からの相談】

私が所有する自宅の土地建物を売ることになり、6,800万円で売買契約をしました。

 

契約時に手付金340万円を受領し、残金決済・引渡までにこちらで隣地等との境界を確定し土地家屋調査士が作成した実測図等の境界確認書を買主に交付することとされました。そこで、売買契約後、こちらで道路を含む隣接土地の境界を確定する測量や立ち会い作業をしました。

 

しかし、その測量が終わった直後頃に、突然買主から内容証明郵便で手付解除するとの通知がきました。

 

こちらとしては、隣地立会で境界確認まで行ったのに、手付解除されることは納得できません。

 

このような場合も、買主からの手付解除は認められるのでしょうか。

 

【弁護士の解説】

不動産の売買契約では、契約時の手付金の支払いにより、買主は手付金を放棄し(手付流し)、または、売主は受け取った手付金の2倍を返却する(手付倍返し)ことで、契約を解除できるという条項が定められることが一般的です。

 

この手付解除については、通常は解除の期限が定められることも多いため、その場合は、手付解除期限まで上記内容の解除が可能です。

 

もっとも、手付解除の期限が定められていなかったり、契約書で「相手方が本件売買契約の履行に着手する前に限り手付解除できる」とだけ定めたりするケースも散見され、この場合は、いつまで手付解除が可能かを巡って争いになることがあります。

 

手付解除の期限が契約で定められなかった場合は、民法557条の規定により原則として

 

当事者の一方が契約の履行に着手するまでは

 

手付解除が可能となりますが、この「履行の着手」があったかどうかを巡って裁判では争いになるケースがあります。

 

この「履行の着手」があったどうかの判断基準は、最高裁の判例で

 

債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部を成し又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指すもの」(最高裁昭和40年11月24日大法廷判決)

 

とされており、裁判実務はこの基準に従って判断されています。

 

しかし、実際に、どこまで作業や手続きをすれば上記の基準に当てはまるのかは、具体的なケースに即して考えていく必要があります。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを、北村氏が再監修のうえGGO編集部で再編集したものです。

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