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子供だけじゃない…親にも試される「英語力」
ここまで聞けば順風満帆、という感じもするが、彼女を悩ませるのが英語でのコミュニケーションだ。子供を迎えに行くたび、学校の先生と英語で話さなければならない。
「私は純ドメ※で大学受験以来、英語には触れていない。正直、先生がなにを言っているのかもよくわからない。連絡アプリの内容も毎日Google翻訳しています」とうなだれる。
※純粋ドメスティックのこと。生まれてからずっと生まれた国にいる人
彼女が住むタワマンには同じインターに子供を通わせている家が数組いるが、ほかの親はみな英語が流暢で、先生とのコミュニケーションを完璧にこなしている。
「送迎やイベントのたび、一人だけ半笑いでやりすごしているけど、すごく惨めな気持ちになる」という。
最初は順調だった子供の英語力も、ここにきて成長スピードが鈍化しつつあることも悩みだ。ある日、夫がお迎えをすると学校の先生から「友達同士で日本語を話すことがあるから、家でも注意して欲しい」と伝えられたという。本人としても、つい得意な日本語が出てきてしまうという。
子供に注意しても、なぜ日本語を話してはダメなのか、まだ納得できないようだ。
「少しでも英語への接触時間を増やそうとNetflixの音声を英語にしたけれど子供は嫌がるし、もうどうすればいいのかわからない……」と悩ましげだ。
最近、インターに通う子供は英語も日本語も中途半端な「セミリンガル」になる可能性があるというネットの記事を読み、日々悶々としているという。
親同士のコミュニケーションも憂鬱の種だ。インターに通う子供同士が仲良くなり、たまにお茶をするようになったが、周りの親は外資系企業や起業でバリバリ働いている。
「私みたいに、日本企業の内勤でまったり働いている層とは話のレベルが違う」
なかには中国から帰化し、子供に日中英のトリリンガル教育を施している親もいるという。
「子供の語学力で親としての能力が試されているようですごく嫌だ」と嘆く姿は、深刻そのものだ。
「なんで東京タワーが見えないの?」…高層階と低層階の“格差”
タワマンと一口に言っても、低層階と高層階ではエレベーターの種類も違えば、住設機器も異なる。
「キッチンの水栓がうちは国内ブランドなのですが、子供のお友達の家はドイツ製なんです。トイレも、うちよりも全然高い上位機種の製品でした」
子供が遊びにお呼ばれして高層階の豪華な部屋を見比べるたび、憂鬱になるという。
部屋の値段も段違いだ。ネットで調べると、同じ間取りでも低層階と高層階では1億円以上の差がついているといい、とても手が出ない。いまの家に引っ越してきたときは2人目の子供も考えていたが、教育費のことも考えると、これ以上は無理だと諦めたという。
憂鬱な親心を察してか、「格差」に子供も敏感に反応する。
「先日、子供から『なんでうちの部屋からは東京タワーが見えないの?』と聞かれて、答えられませんでした。悪気がないとは思うのですが、高層階の子供は『うちは東京タワーが見えるから』みたいな自慢をしているようです。親同士、私がいないところで、どういう風に言われているのかを考えるだけでゾッとします」と嘆く女性は、精神的に参っているようだった。
「背伸びなんかしなければよかったんでしょうね」
そう話す女性だったが、いまさらインターをやめさせるという選択肢も、タワマンから引っ越すという選択肢もないという。本来であれば「中の上」としてそこそこの暮らしができたはずなのに、上の世界を見てしまったゆえの悩みなのだろうか。
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