妻を亡くして3年、広い戸建てが負担になった理由
「また雨どいを直さないといけないのか……」
修一さん(仮名・68歳)が自宅の修理について業者から説明を受けたのは、妻を亡くして3年ほど経ったころでした。
現在は一人暮らしで、年金は月約14万円。住宅ローンを完済した築30年以上の戸建てに住んでいます。預貯金は約1,200万円ありました。
家そのものに強い不満があったわけではありません。子どもたちを育てた思い出があり、庭では妻が好きだった花も育てていました。
ただ、一人になってからは、家を維持する負担が目立つようになりました。
庭木の剪定や草取りは業者へ依頼するようになり、前年には給湯器を交換。今後は外壁や屋根の補修も必要だと言われていました。
「一度に100万円、200万円とかかるでしょう。年金14万円で生活していると、家を持っているだけで次はどこが壊れるのかと考えるようになったんです」
2階には、独立した子どもが使っていた部屋が残っています。掃除のために階段を上りますが、実際に生活しているのはほぼ1階だけでした。
そこで修一さんが考えたのが、家を売って小さな賃貸住宅へ移ることでした。
民間のアパートも何件か見ましたが、家賃6万~7万円に管理費が加わる物件が多く、年金生活で長く払い続けることに不安が残りました。
そんなとき、市の広報で市営住宅の募集を知ります。
公営住宅は、公営住宅法に基づき、住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で供給される住宅です。入居には収入などの要件があり、その基準や単身者が申し込める条件は自治体によって異なります。高齢者などについて、一般世帯とは異なる収入基準を設けられる仕組みもあります。
修一さんは市役所で相談し、自分が単身高齢者向けの募集に申し込めることを確認しました。
ただし、希望すればすぐ入れるわけではありませんでした。
募集されるのは空室のある住宅だけで、希望した団地に毎回空きが出るとは限りません。自治体や募集区分によっては応募者が多ければ抽選になります。たとえば都営住宅でも、定期募集には抽選方式があり、募集時期や区分ごとに申し込み方法が定められています。
修一さんは最初の募集で、駅に比較的近い団地を希望しました。結果は落選でした。
「申し込めば入れると思っていたので、そこは甘かったですね」
戸建てを先に売るわけにもいかず、そのまま暮らしながら次の募集を待つことにしました。
