(写真はイメージです/PIXTA)

11月10日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表。消費・投資のいずれも前期比でマイナスとなりました。本稿ではニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、英国GDP(2023年7-9月期)を分析し、英国経済の現状について解説します。

1.結果の概要:前期比で小幅マイナス

11月10日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。

 

【2023年7-9月期実質GDP、季節調整値)】

  • 前期比は▲0.0%、予想1(▲0.1%)を上回ったが、前期(0.2%)から低下した([図表1]
  • 前年同期比は0.6%、予想(0.5%)を上回り、前期(0.6%)と一致した

 

【月次実質GDP(7-9月)】

  • 前月比は7月▲0.6%、8月0.1%、9月0.2%となり、9月は予想(0.0%)を上回る成長を記録した。

 

 


1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:消費、投資がいずれも前期比マイナス、内需が冴えない

英国の23年7-9月期の実質成長率は前期比▲0.0%(年率換算▲0.1%)となり、小幅なマイナス成長となった。成長率は4-6月期(前期比0.2%、年率換算0.8%)から低下したが、市場予想は上回った。

 

また、マイナス成長は22年7-9月期(前期比▲0.1%、年率換算▲0.3%)以来となる。7-9月期の実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて1.8%高いが、ユーロ圏各国と比較すると相対的に回復が遅れている([図表2]2

 

成長率を需要項目別に確認すると、個人消費が前期比▲0.4%(前期0.4%)、政府消費が▲0.5%(前期2.5%)、投資が▲2.0%(前期0.8%)、輸出が0.5%(前期▲0.9%)、輸入が▲0.8%(前期2.2%)、在庫変動等の前期比寄与度は0.24%ポイント(前期0.3%ポイント)、純輸出は同0.43%ポイント(前期▲0.99%ポイント)だった。

 

高インフレ・高金利を受けて、消費や投資がマイナスとなり、内需が冴えず停滞感の強さが感じられる結果だったと言える。

 

 

成長率を部門ごとに確認すると、農林水産部門が前期比0.2%、生産部門が同0.0%、建設部門が同0.1%、サービス部門が同▲0.1%となった([図表4])。

 

より細かい産業分類では、輸送サービス(前期比▲1.2%)、その他サービス(▲1.2%)、水道(▲0.8%)といった産業での落ち込みが目立つ。一方、芸術・娯楽サービス(2.3%)は比較的高めの伸び率となった。

 

なお、単月の状況を月次GDPで確認すると、7月は前月比▲0.6%、8月は同0.1%、9月は0.2%だった。7月は大きく減少したがその後は緩やかに成長している([図表3])。

 

ONSは生産量に影響を及ぼした要因として、ストライキの影響(医療、教育、輸送など)や天候要因(7月は多雨、9月は温暖)を挙げており、単月ごとの動きにバラツキも見られるが、総じて低成長が持続し、足もとの回復力も強くないと言える。

 

 

名目GDPについては、7-9月期の前期比で1.4%(4-6月期は2.5%)、前年同期比で8.6%(前期8.5%)、デフレータは前期比1.4%(前期2.4%)、前年同期比7.9%(前期7.9%)となった([図表5])。

 

前年同期比で見ると、輸出入物価がそれぞれ減速しているものの、それらが相殺されてGDPデフレータの伸び率は高止まりしている。

 

名目GDPを所得別に見ると、雇用者報酬が前期比1.0%(前期2.0%)と減速、営業余剰は同▲1.5%(前期▲%)と2四半期連続のマイナスとなった。企業収益が減少し、雇用者報酬の伸びがやや鈍化していることがうかがえる。

 

 


2 前回4-6月期の速報値時点では実質GDPの水準はコロナ禍前比▲0.2%だったが、その後に公表された年次国民経済計算およびそれを反映した4-6月期の改定値でコロナ禍後の成長率が大幅に上方修正されている。なお、サービス部門の回復が上方修正される一方で生産部門は下方修正され、21年以降の生産が大きく落ち込み、足もとまでコロナ禍前を割る水準となっている([図表3]参照)。

 

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    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月13日に公開したレポートを転載したものです。

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