(写真はイメージです/PIXTA)

11月12日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表しました。賃金上昇率は低下し続けていますが、依然として高水準です。本稿ではニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、英国国家統計局(ONS)の公表した雇用関連統計を分析し、英国経済の現状について解説します。

1.結果の概要:給与所得者数は増加

11月12日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった1

 

【10月】

  • 失業保険申請件数2は前月(155.01万件)から1.78万件増の156.79万件となった([図表1])。
  • 申請件数の雇用者数に対する割合は4.0%となり、前月(同4.0%)から横ばいだった。
  • 給与所得者数3は前月(3017.8万人)から3.3万人増の3021.1万人となった。増減数は前月(+3.2万人)から拡大し、市場予想4(▲1.7万人)を上回った。

 

【9月(23年7-9月の3か月平均)】

  • 調整失業率は4.2%で前月(4.2%)から横ばいだった([図表1])。
  • 調整就業者は3298.4万人で3か月前の3292.9万人から5.4万人増加した。増減数は前月(▲8.1万人)から増加に転じた。
  • 週平均賃金は前年比7.9%で前月(8.2%)から低下、市場予想(7.3%)を上回った([図表2])。

 

 


1 ONSは回答率の低下を受けて、労働力調査の改良(The transformed Labour Force Survey)を行っているが、現在開発中であり、就業者・失業率は給与所得者数や失業保険申請件数で調整した実験統計ベースの数値が公表された。

2 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは実験統計という位置付けで公表している。

3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計(22年7月から推計方法変更)。

4 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:賃金上昇率はピークアウトしたと見られるが、以前として高水準

まず、9月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は23年8-10月の平均で95.7万件となり22年3-5月平均(130.2万件)をピークに減少傾向が続き([図表3])、3か月連続で100万件を割り込んだ。

 

産業別には、専門サービス、芸術・娯楽サービスといったサービス業の減少が目立った。単月求人数も10月は98.4万件と100万件を下回った5

 

給与所得者データでは、10月の給与所得者数(速報値)が前月差で+3.3万人となった。また、9月分のデータは改定され前月差マイナスから大幅プラスとなった(▲1.1万人→3.2万人)。

 

7-8月は2か月連続で減少したものの、その後は再び増加が続いたことになる([図表4])。10月の給与額(中央値)は前年同月比5.9%で9月(6.0%)から減速している。

 

 

労働力調査ベースの数値は、調整値)では7-9月期の失業率が4.2%で横ばいだった([図表1])。16才以上の人口が増加するなか、就業者、失業者、非労働力人口のいずれも小幅に増加した。

 

 

名目賃金は7-9月期の前年同期比で7-9%と前月(8.2%)から低下したものの、以前高水準にある。名目伸び率の低下とともにインフレ率も低下したことを受けて実質賃金の上昇率は1.4%と前月(1.4%)から横ばいで推移した([図表2])。

 

主に7月に公務員への一時金支払があり、これが賃金上昇率を押し上げている(このほかNHSの一時金支払が6月にあり公的部門の賃金を押し上げている、[図表5])が、ボーナスを除く定期賃金伸び率も前年同期比7.7%と高く、データ公表以来最も高い伸び率を記録した前月(7.9%)からの低下幅は小幅にとどまる。

 

また、実質ベースの定期賃金伸び率は前年同期比1.3%と前月(1.2%)から小幅に上昇した。

 

処遇改善を求めたストライキは、9月は件数ベースで652件、労働損失日数で22.9万日となった([図表6])。労働損失日数は昨年末から今年初めと比較すると減少傾向にあるものの、コロナ禍前よりは高い。

 

また、労働争議件数は高止まりしており、特に公的部門の争議が大部分を占めている。

 


5 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。

 

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    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月15日に公開したレポートを転載したものです。

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