相続の準備状況と「配偶者の有無」の関連性
また、当然ではあるが、「財産を残したい親族がいるか」という点も、相続の準備状況に違いを生んでいるだろう。当シリーズの別稿「シングル高齢者の住宅と生活~未婚女性の6割は1日60分以上歩くアクティブ層、未婚男性と離別・死別男女の1割弱は殆ど歩かない不活発層」によると、未婚男性のほとんどは子や孫がいないため4、準備が低調だと考えられる。
男性のうち「配偶者あり」と「離別・死別」は、全体比べて有意な差は見られなかった。
次に女性について見ると、「全体」では、男性と同じく約6割が「特に何もしていない」と回答し、何らかの準備をしているのは約4割だった。
具体的に準備しているものの傾向も、男性と同じで、最も多いのが「生命保険加入」(約3割)、次いで「生前贈与」(約1割)と「遺言の作成」(約1割)となった。
配偶関係別にみると、「未婚」は「特に何もしていない」割合が、全体より低かった。上述した世帯の資産状況との関連をみると、未婚男性とは逆に、未婚女性は「100万円未満」という低資産層の割合が約1割で、すべての性・配偶関係の中で最も低かった。
これが、相続準備のプラス要因になっている可能性がある。具体的な対策をみると、「遺言の作成」は全体より10ポイント以上高かった。未婚女性のほとんどは子や孫がいないが5、「生前贈与」や「生命保険加入」の割合も、全体と同水準だった。
前稿「人生100年時代のシングル高齢者の不安と備え~未婚女性はポジティブで備えも進み、未婚男性はネガティブで備え不足」では、未婚女性は、すべての性・配偶関係の中で、長生きする意欲が最も強いことや、老後に向けた経済的な備えが最も進んでいることを紹介したが、相続についても、最も計画的に実施していることが分かった。
長寿を見据え、あらゆる面で、準備を着々と進めている様子が伺える。但し、子や孫がいない中で、未婚女性が進めている生前贈与の内容や生命保険加入の目的等については、当調査では明らかではなく、筆者の今後のテーマとしたい。
4 未婚男性のうち、「つき合いのある親族」として「子(未婚)」を選んだのは0%、「子(既婚)」は3%、「孫」は0%(「シングル高齢者の住宅と生活~未婚女性の6割は1日60分以上歩くアクティブ層、未婚男性と離別・死別男女の1割弱は殆ど歩かない不活発層」。
5 未婚女性のうち、「つき合いのある親族」として「子(未婚)」を選んだのは0%、「子(既婚)」は0%、「孫」は3%(同)。