“無意識のうちに”相手が話しづらい聴き方をしてはいないか
マネジメントの役割を担っている人には、キャリアの浅い相手、異なる価値観や考え方を持った相手のことを受けとめられる聴き方が必要とされます。自分のほうが経験値が高い、キャリアがあるので、わたしのほうが正しい、と思い込んでいると、相手の意見と異なるときに「いや違う」と言葉を挟んだり、イラッとしたりして、相手の話を傾聴できないということが起こりがちです。
「よかれと思って」と言って、アドバイスと称して意見を押し付けるケースもよくあることです。このようなことをなくすには、自分から、立場が下の人やキャリアが浅い人の話を聴こうと意識することが必要です。
上層部の人ほど忙しいため、より早い決断・解決を意識しているものです。そのため、「自分に意見や相談をするのだったら、手短に伝えてほしい」という意識を持っている人も大勢います。
ある大手企業のマネジメント層の方から、コミュニケーションに関するご相談を受けたときのことです。わたしと話している最中も、「はい、はい、はい。わかる、わかる、わかる」 と矢継ぎ早に急かすような相槌をしていました。そのうえご本人から「まわりから、〇〇さんは人の話をちゃんと聴いてくれない、と言われるんだ」と相談されたので、その相槌では話しづらいということを率直にお伝えしたところ、
「え! そんなふうに相槌を打っていましたか。自分では無意識でした。つい普段からスピーディーに物事を進めることを意識していたから、相槌まで速くなってしまったのかも……」
とおっしゃっていました。
このように、無意識のうちに相手が話しづらい聴き方をしてしまっていることはないでし ょうか。
忙しい人が意識すべきこと
忙しい人は、相手が考えながら話す場面でも、待っていられない雰囲気を出してしまいがちです。部下から話しかけられて、「早く言って」「手短にね、要するに何?」と言ってしまうことはありませんか? このような返答を受けると、部下は話すモチベーションを失うものです。
相手を急かす言葉をかけてしまう上司側の話を聴くと、限られた時間で話を聴かなくてはいけないため、部下には、簡潔かついち早くゴールにたどり着く対話を期待しています。より忙しい人やスピーディーな決断を求められる人ほど、「要するに何?」と思いながら聴いているので、相手はますます話しづらい雰囲気になってしまうのです。
すべての人がロジカルに簡潔に話ができるのが理想ではありますが、現実にはそうではない人も大勢います。部下にプレッシャーを与えてしまうと、口ごもって、余計に話ができなくなるという悪循環に陥ることもあるので、どんなに忙しくても「要するに何?」 「で?」 は禁句です。とくにポジションパワーのある人から言われるとプレッシャーがかかるので、より気をつけたいものです。
ちなみに、先ほど例に挙げた方には、「忙しくても、せめてゆっくり返答しましょう」と、2倍のペースでゆったり返事をするようにアドバイスしたのですが、実践するうちに、部下の反応も変わってきたそうです。
子どもに対しても同じことが言えます。忙しくしていると、つい大人は「何? 何?」 と急かしてしまいますが、この対応が続くと子どもは「もう、いいや」と諦めてしまうことがあります。どんなに忙しくても、相手を急かさないように心がけたいものです。
また、話をまとめるのがあまりにも苦手な人の場合は、訓練してもらう必要があるため、 「よく考えてまとめてから、もう一度来てくれるかな」 と伝え、まとめ方のアドバイスをするのも必要でしょう。「お互いさま」の気持ちを忘れず、アクティブ・リスニングを心がけていきましょう。
アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事