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「価値観の違う相手とどう話せばいいのかわからない」「こちらの話は聴いてもらえず、一方的に話されてしまった」コミュニケーションの悩みは尽きないもので、ちょっとしたことで相手に不快感を覚えたり、逆に不快感を与えてしまったりすることは多々あります。本稿では、研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任し、25万人以上への指導経験を持つ、日本アンガーマネジメント協会理事である戸田久実氏の著書『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』(日経文庫)より、一部抜粋して紹介します。

揉めている二人の仲裁役として間に入るとき

揉めている人同士の間に入る際にもっとも大切なのは、中立であり続けることです。途中でどちらかに肩入れしないことと、どちらがいいか悪いかを、ジャッジしないようにしましょう。

 

揉め事になる場合は、だいたい双方の言い分に少し違いがあり、それぞれの思い込みも入っているものです。わたしがある揉め事の仲裁に入った際は、

 

「お互いに文句を言う場ではなく、この二人がうまくコミュニケーションをとれて、関係を円滑に進めるための時間にしましょう」

 

と、何のために三人で会っているのか、時間を1時間にした意図なども最初に伝えました。

 

「お互いにいろいろと誤解や言い分もあるのでは?」

 

「よく話してみたら行き違いもあるかもしれません。どちらがいいか悪いかではなく、今後も力を合わせて一緒にやっていくための時間です」

 

と最初に目的を伝えておくことで、不用意な邪推や変な方向に話が飛ぶのを防ぐことができます。

 

二人が揉めている場合は、一方が意見を言うと、もう一方は 「でも、わたしはそんなつもりではなかった」という話になってしまいがちです。ですから、途中で話を遮られそうになったときは、第三者が入って、

 

「〇〇さんはそう思うよね。でも、話は最後まで聴きましょう。あとで〇〇さんがどう思ったのかは、もう一回聴きますね」

 

と最後までお互いの話を聴くように促しましょう。互いに最後まで相手の話を聴くということは、それほど難しいものなのです。

素晴らしい影響をもたらす仲介者とは

お互いに、それぞれ勘違いも、変に邪推していたところもあったとわかったら、話を整理していきます。

 

「Aさんはこういうふうにしてほしかった。Bさんはこうだった。今回、この場で二人の誤解が解けたところがあったよね」

 

「整理してみると、ここは誤解で、本当はこうでしたね」

 

「二人とも、やりたいことやお互いに求めていることは〇〇でした」

 

と整理して、解決に向けてのすり合わせができるようにまとめていきます。

 

そして最後は、「今後は、こんな話し合いが二人でできるとベストだね」 と、未来に向けた話をして終えます。

 

この仲裁者は自分の意見は入れず、まとめていくのが役割です。とにかく整理する役、話を振る役に徹しましょう。

 

話し合っているうちに、どちらが合っているか、間違っているかという話が始まったら、「これからどうしようかを考えよう」と、都度話を戻してください。これができれば職場でもプライベートでも心理的安全性が上がり、素晴らしい影響をもたらせるはずです。

聴いているうちに、怒りがわいてしまうときには

相手の話を聴いているうちに、「この人はなぜこんなに自分勝手なことを言ってくるのだろう……」「なんでここまで言われなくてはいけないのだろう……」と思う場合があります。そんなときほど、アンガーマネジメントの手法を活用してください。

 

相手の言い分に対してこちらが怒りをあらわにしたら、「この人は話の途中でキレた」と思われてしまいます。怒りがわくときには、相手の話を聴きながら、意識だけ違うところに持っていきましょう。

 

アンガーマネジメントには「グラウンディング」というテクニックがあります。怒りがわいたら、五感に意識を向けようというものです。

 

たとえば、視覚は意識を向けやすいので、目の前にペットボトルがあったら、「これはど このメーカーだっけ? どこの産地? 成分がたくさん書いてあって……」とラベルに目を向けることや、「このペンは使い込んでいるから、こんなところに傷があるな」「このカップは、いつから使っていたかな?」というように、違うことに意識を向けることで、怒りの渦中に身を置かずに済みます。トレーニングするとできるようになるので、ぜひ試してみてください。

 

 

戸田 久実

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事

 

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