(写真はイメージです/PIXTA)

米国で10月31日-11月1日(現地時間)、連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されました。「景気判断」では経済活動に上方修正がなされた一方で、フォワードガイダンスには変更がありませんでした。本稿ではニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、今回のFOMCの内容から米国経済の今後の見通しについて解説します。

4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。

 

・パウエル議長の冒頭発言

  • 政策スタンスは制限的であり、引締め政策が経済活動とインフレに下押し圧力をかけていることを意味するが、引締めの効果はまだ十分に現れていない。本日、我々は政策金利を据え置き、保有有価証券の削減を継続することを決定した。追加的な政策引締めの程度や、政策が何時まで制限的であり続けるかについては、入っているデータ、進展する見通し、リスクのバランスを総合的に判断して決定する。
  • 経済活動は力強いペースで拡大しており、以前の予想を大幅に上回っている。
  • 力強い雇用創出は、労働供給の増加を伴っている。労働参加率は昨年末から上昇し、とくに25歳から54歳の労働参加率が上昇した。雇用と労働者数の格差は縮小しているものの、労働需要は依然として供給力を上回っている。
  • インフレ率は長期目標である2%を大幅に上回っている。インフレ率は昨年半ばから緩やかになり、夏にはかなり良好な数値が示された。しかし、数ヵ月の良好なデータは、インフレ率が目標に向かって持続的に低下しているという確信を得るために必要なことの始まりに過ぎない。インフレ率を持続的に2%まで低下させるプロセスは、まだ長い道のりがある。
  • 潜在成長率を持続的に上回る成長、あるいは労働市場の逼迫がもはや緩和されていないことを示す証拠があれば、インフレの更なる進展がリスクにさらされ、金融政策の更なる引締めが正当化される可能性がある。
  • 金融情勢はここ数ヵ月、長期債利回りの上昇などに牽引され、大幅に引締まった。金融情勢の持続的な変化は金融政策の行方に影響を与える可能性があるため、我々は金融情勢を注意深く監視している。
  • 我々は今後も、入ってくるデータの全体像と、それらが見通しと経済活動およびインフレに与える影響、ならびにリスクのバランスに基づいて、会合ごとに決定を下していく。

 

・主な質疑応答

  • (長期債利回りの上昇は今回の会合でのFRBの行動にどの程度代替されたのか)夏以降、より広範な金融環境の引締めに寄与している長期債利回りの上昇に注意を払っている。広範な金融情勢の持続的な変化は、金融政策の行方に影響を与える可能性がある。金融環境の引締まりは2つの条件が満たされる限り、将来の金利決定にとって重要な意味を持つ可能性がある。1つ目の条件は引締めが持続的である必要があること。もう1つの条件は長期債金利の上昇が、我々が期待した政策の動きを反映したものではないこと。
  • (12月に利上げをしなかった場合、その時点で利上げはピークに達したと考えるべきか)まず、我々は12月について決定を下していないことからはじめたい。12月の会合までに2つのインフレ指標、2つの労働市場、そして経済活動に関するいくつかのデータが発表される。我々はこれらに加え、金融情勢や世界情勢なども含めて12月に判断する。そして、(1月以降も)委員会は常にその時点で適切と思われることを実行する。
  • (FRBスタッフは景気後退をベースライン予想に戻したか)戻していない。議事録で示されるだろう。最近の動きは、短期的な景気後退を示唆するものではない。
  • (金融環境の引締まりが利下げの軌道にどのような影響を与える可能性があるか)委員会は現時点で利下げについて全く考えていない。我々はインフレ率を長期にわたって持続的に2%に低下させるのに十分制限的な金融政策スタンスを達成したのかという質問に非常に焦点を当てている。次の質問は何時まで制限的な政策を続けるのかだ。利下げはその次の質問だが、今は最初の質問にしっかりと焦点を当てている。
  • (インフレ率を低下させるために労働市場や全体的な成長にとってどのような痛みが必要か)今回のような利上げサイクルにありがちな失業率の上昇をみることなく、インフレ率に関してかなり大きな進展を達成したことは誰にとっても喜ばしいことだ。これは歴史的にも異例で、歓迎すべき結果だ。しかし、物価の安定を完全に回復するためには、成長率の鈍化と労働市場の軟化が必要になるだろうが、そうなっていないことは良いことで、その理由はわかっている。1つはパンデミックへの対応による需給の歪みの解消、もう1つは需要を緩和し、供給側に回復する時間を与える制限的な金融政策だ。これら2つの力が一緒になってインフレを押し下げている。しかし、そうしたことは一巡し、おそらくまだ物価の安定を取り戻すにはいくつかの課題が残されている。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月2日に公開したレポートを転載したものです。

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