(写真はイメージです/PIXTA)

米国で10月31日-11月1日(現地時間)、連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されました。「景気判断」では経済活動に上方修正がなされた一方で、フォワードガイダンスには変更がありませんでした。本稿ではニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、今回のFOMCの内容から米国経済の今後の見通しについて解説します。

1.金融政策の概要:予想通り、2会合連続政策金利を据え置き、フォワードガイダンスを維持

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が10月31日-11月1日(現地時間)に開催された。

 

FRBは市場の予想通り、政策金利を2会合連続となる5.25-5.5%で据え置いた。量的引締め政策の変更はなかった。

 

今回発表された声明文では景気判断部分で経済活動について、前回の「堅調(solid)なペースで拡大」から「力強い(strong)ペースで拡大」に上方修正されたほか、雇用の増加についても、前回の「鈍化(slowed)」から「緩やか(moderated)」に上方修正された。

 

また、景気見通しでは足元の金融環境の引締まりを踏まえて、信用状況の引締まりに関する部分に「金融(financial)」の記述が追加された。

 

一方、フォワードガイダンスに変更はなかった。フォワードガイダンス部分では「追加的な金融引締めの程度を見極める上で、委員会は金融政策の累積的な引締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する予定である」との表現が維持され、追加の利上げの可能性を残した。

 

今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。

2.金融政策の評価:依然として追加利上げの可能性は残した

政策金利の据え置きと追加利上げの可能性を残したことは予想通りであった。

 

パウエル議長の記者会見では、足元のインフレ動向について夏にはかなり良好な数値が示されたとしつつ、インフレ率を持続的に2%まで低下させるプロセスは、まだ長い道のりであることを示した。

 

また、金融政策について最近の長期金利の上昇が金融引締めと同様の効果をもつことを認めた上で、インフレ率を長期にわたって持続的に2%まで低下させるのに十分制限的な金融政策スタンスを達成したのか未だ確信が持てないとしており、ガイダンス部分に変更がなかったことと併せ次会合以降の追加利上げの可能性を残した。

 

当研究所は今後の長期金利の動向や金融環境の引締まりが景気やインフレに与える影響が不透明なものの、足元の好調な経済状況や労働市場の動向から賃金上昇率の低下は緩やかに留まるとみられ、当面コアインフレ率が物価目標を大幅に上回る状況を考慮すると12月の追加利上げの可能性は依然残っていると予想する。

次ページ3.声明の概要

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月2日に公開したレポートを転載したものです。

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