(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省の2023年「国民生活基礎調査」の結果によると、2021年の子どもの相対的貧困率は11.5%であり、ひとり親世帯に限ると44.5%と半分近くが貧困状態にあります。その背景には、特にシングルマザーが養育費を十分に受け取れていないという問題があるとみられます。本記事では、養育費の実態と今後の課題について解説します。

養育費の取り決めがされない構造的な理由

まず、養育費の取り決めをしていない理由を見てみましょう([図表4]参照)。

 

厚生労働省「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より
【図表4】養育費の取り決めをしていない理由 厚生労働省「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より

 

複数回答可ですが、1位が「相手と関わりたくない」(50.8%)、2位が「相手に支払う意思がないと思った」(40.5%)、3位が「相手に支払う能力がないと思った」(33.8%)となっています。

 

また、「相手から身体的・精神的暴力を受けた」が15.7%、「取り決めの交渉をしたが、まとまらなかった」が14.6%です。男性の威圧的な態度や強硬な拒否が原因で養育費を請求できないでいるケースも、相当数あることが推察されます。

 

これに対し、母親が最初から養育費を必要としていない「自分の収入等で経済的に問題がない」は7.8%にとどまっています。つまり、養育費を受け取っていないシングルマザーの多数は、父親に養育費を負担してほしかったのに、請求できなかったということになります。

父親の養育費支払い義務の履行確保を強化する必要性

養育費の取り決めはあるものの、それが守られていない点については、厚生労働省の調査では直接は触れられていません。しかし、履行義務を確保する法的制度があっても十分に活用されていない可能性があります。

 

たとえば、父親が養育費を支払わない場合は、「預金」や「給与」の「差押え」をする方法があります。給与については、その都度差押えをしなくても、一度の差押えで、次の月以降にも効力が及ぶようになっています。

 

しかし、その前提として「債務名義」を得る必要があります。それは離婚訴訟の確定判決、調停調書、審判書、公正証書(支払いが滞ったらすぐ強制執行できる旨を明記)等です。また、それらの債務名義を得て差押えをするには、時間や費用がかかります。

 

このことから、履行義務の確保の制度を拡充していくことは急務です。また、そもそも知らない人も多いと想定されるので、以下のことを国民に対し周知徹底することは必要です。

 

・離婚・未婚にかかわらず養育費の請求をする権利がある

・父親の毎月の給与等を差し押さえできる制度がある

 

厚生労働省や各地方公共団体は、「養育費相談支援センター」を設置し相談員を配置するなど、養育費に関する啓発活動やサポート活動を行っています。しかし、これらは基本的に母親に向けられたものであり、養育費を負担すべき肝心の父親に対する啓発活動としては不十分です。学校教育とりわけ義務教育の段階から男女問わず周知徹底する必要があります。また、養育費の取り決めを義務付ける制度、履行を確保する制度について、実効性を高めることが求められています。

 

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