(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省の2023年「国民生活基礎調査」の結果によると、2021年の子どもの相対的貧困率は11.5%であり、ひとり親世帯に限ると44.5%と半分近くが貧困状態にあります。その背景には、特にシングルマザーが養育費を十分に受け取れていないという問題があるとみられます。本記事では、養育費の実態と今後の課題について解説します。

養育費を受け取っているのは「4人に1人」

シングルマザーは「児童手当」のほかに「児童扶養手当」を受け取ることができますが、子どもが1人の場合の月額は1万160円~4万3,070円であり、決して十分な額ではありません。

 

市町村が独自の手当を設けていることもありますが、それにも限度があります。そこで重要な役割を果たすのが、離別した子どもの父親から受け取る「養育費」です。

 

では、養育費の受給状況はどうなっているでしょうか。

 

厚生労働省「令和3(2021)年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」を見ると、20歳未満の子を養育している母子世帯の母の受給状況は「現在も受けている」が28.1%となっており、約4人に1人にとどまっています。一方で、「過去に受けたことがある」との回答は14.2%となっており、当初の養育費の取り決めが守られていないケースが相当数あることがみてとれます([図表1]参照)。

 

厚生労働省「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より
[図表1]母子世帯の母の養育費受給状況 厚生労働省「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より

 

未婚のシングルマザーの大半が養育費を受け取れていない

養育費を受け取れない以前に、そもそも、養育費の取り決めすらなされていないケースもあります。シングルマザー全体(離婚・未婚)では、「取り決めをしている」が46.7%なのに対し、「取り決めをしていない」が54.3%と上回っています([図表2]参照)。

 

厚生労働省「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より
[図表2]養育費の取り決めの有無(離婚・未婚別) 厚生労働省「令和3(2021)年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より

 

また、婚歴の有無によっても差があります。「離婚」のシングルマザーは46.7%が「取り決めをしている」のに対し、「未婚」のシングルマザーは13.6%にとどまっているのです。しかも、「未婚」のシングルマザーのうち「現在も受けている」は51.2%なので、単純計算すると、未婚のシングルマザー全体のうち約7.0%しか養育費を受け取れていないことになります([図表3]参照)。

 

厚生労働省「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より
[図表3]母子世帯の母の養育費の受給状況(離婚・未婚別) 厚生労働省「令和3年(2021年)度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より

 

「未婚」のシングルマザー世帯の場合、現状、90%を超えるケースで父親が責任を果たしていないということになります。父親は、結婚していなくても子を養育する法的義務を負っているので(民法877条)、養育費は当然に決めなければなりません。しかし、それが徹底されていないという実態がうかがわれます。

 

つまり、シングルマザー世帯の養育費については、以下の2つの問題が指摘されるということです。

 

1.養育費の取り決めをしているケースが少ない

2.養育費の取り決めがあっても履行義務が守られていないケースが多い

 

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