(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の日本、認知症の発症は他人事ではない。症状が進めば介護負担は非常に重くなることから、老人ホームへの入居は有力な選択肢だ。しかし、認知症の症状によっては、施設内でトラブルが起こるケースもあるという。実情を見ていく。

認知症在宅介護の実情…半数はアルツハイマー型、要介護2が最多

高齢化社会の日本では、自身はもちろん、家族が認知症になることを不安視する人が増えている。

 

日本認知症官民協議会『認知症のご家族への調査』によると、家族が認知症になった年齢は、男性平均79.9歳、女性平均82.0歳で、診断されたのはアルツハイマー型認知症が最も多く、約半数だった。

 

(n=1,481、複数回答) 出所:認知症イノベーションアライアンスWG事務局「認知症のご家族への調査」201911実施を基に作成
[図表1]対象となる認知症の方の診断名 (n=1,481、複数回答)
出所:経済産業省/認知症イノベーションアライアンス ワーキンググループ事務局『認知症のご家族への調査結果について』2ページ

 

現在の介護度(調査回答者による自己申告)は「要介護2」が最多で20.7%。「要介護3」が20.1%、「要介護1」が18.6%、「要介護4」10.2%となっている。

 

また認知症と診断された時期で最も多かったのは「5年以上前」の22.6%。以降、「1~2年未満」が18.8%、「2~3年未満」が17.6%、「3~4年未満」12.2%となっている。

 

介護する家族のほうだが、週1回1時間以上介護している家族は「2人」が最多で42.9%だが、25.8%が「1人」だった。

 

介護者と認知症患者との関係は「子ども・子どもの配偶者/パートナー」で83%を占めている。介護者の平均年齢は男女とも58.5歳だった。

 

介護に当てる時間だが、「要介護1」は1週間当たり18.1時間、「要介護2」は22.1時間、「要介護3」は25.5時間、「要介護4」は27.7時間、「要介護5」は29.1時間という結果だった。最も多い「要介護2」で1日当たり3時間程度を介護に時間を割いている計算だ。

 

 

また、認知症の症状や行動について、日常生活の中で困りごとの有無も調査されているが、記憶障害が78.6%、理解・判断力の障害が66.0%、見当識障害が55.6%、実行機能障害が54.0%(複数回答)だった。

 

要介護度が上がるにつれ、負担を軽減する保険適用外のサービスを利用が増えるが、その支出は、要介護1で月平均1万4,213円、要介護2で1万7,727円、要介護3で2万3,093円となっている。だが、さらに要介護度が上がると減少傾向を示し、要介護4で1万9,497円、要介護5で2万1,501円となっている。保険適用外のサービスでQOLを上げる余裕すらなくなるということなのか。

 

さらに、在宅介護者が不安に感じる介護だが、自立が難しくなると「認知症状への対応」が急増する。また排泄への不安も急激に増え、認知症の進行が介護者の生活にも大きな影響を及ぼしていることがわかる。

 

出所:経済産業省/認知症イノベーションアライアンス ワーキンググループ事務局『認知症のご家族への調査結果について』18ページ
[図表2]認知症自立度別・介護者が不安に感じる介護 出所:経済産業省/認知症イノベーションアライアンス ワーキンググループ事務局『認知症のご家族への調査結果について』18ページ

老人ホームへの入居も選択肢…知っておきたい入居後のトラブル

認知症の家族の介護度が進めば、介護者にかかる負担は非常に重いものとなる。そのため、「老人ホーム」への入居は有力な選択肢となるだろう。

 

認知症患者でも入居可能な老人ホームだが、公的施設なら、9人を1グループにした少人数制の施設である「グループホーム(認知症対応型生活介護)」や「特別養護老人ホーム(特養)」がある。特養は原則要介護度3以上が対象だが、認知症であれば要介護度2以下でも入居可能な場合がある。

 

民間の施設なら「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」が選択肢だ。サ高住は自立~軽度要介護を受け入れ、介護が必要な場合は外部の介護サービスと個別に契約するのが基本となる。最近は重度要介護高齢者も対応する施設も増えている。

 

だが、リーズナブルな公的な施設は人気が高く、希望してもなかなか順番が回ってこない。そのため、費用は掛かるが、民間のほうがスムーズな入居がかないやすい。

 

厚生労働省によると、厚生年金受給者の平均年金受取額は月額およそ14万円。入居者の年金額が、施設の選定の基準になるといえるだろう。

 

だが、認知症患者の場合は施設でのトラブル懸念もある。しばしばみられるのが金銭にまつわるトラブルだ。これは、本人が金銭を取られたと勘違いするケースと、人の金銭を取ってしまうケースの2パターンがみられる。

 

横浜市のある施設に入所する80代女性の例だが、実際には施設に持ち込んでいないサイフを盗まれたと主張して、ほかの入居者とトラブルになった。スタッフが説明しても「カネ返せ!」「泥棒!」などと繰り返し大声を上げ、収拾がつかなくなってしまった。近くに住む親族が駆けつけ、ようやく落ち着き、納得したという。

 

また、同施設の別の80代の女性は、人のサイフを「自分のもの」と主張し、トラブルになってしまった。施設のスタッフが繰り返し話して聞かせることで収まったが、認知症の入居者にはいずれも起こりがちな問題なのだという。

 

「よくわからないのですが、なにかしらスイッチが入るときがあるようでして…」

「80代ですが、力も強いし声も大きいし、私も、施設のスタッフの方も、本当にゲッソリですよ」

 

認知症となった自身の母親が、施設内でトラブルを起こしたことがあるという50代女性は語る。

 

このような背景から、不要な金品の持ち込みを禁止している施設は多い。また日々のお小遣いを預けられるところもあるというので、家族を入居させる場合は、無用なトラブルを回避するためにも、施設側との事前のすり合わせが重要だ。

 

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