「腹式呼吸」が簡単にできるエクササイズの方法
面白いことに、就寝時には無意識に胸式から腹式へと呼吸法が替わります。寝ている間、
つまり1日の3分の1ほどは、誰でも腹式呼吸を行っているのです。コツさえつかめば、起
きているときも、腹式呼吸はうまくできるはずです。
腹式呼吸を簡単に行えるよう、コツをつかむエクササイズをご紹介しましょう。エクササイズ上級編はインナーマッスルのトレーニングにもなります。
【腹式呼吸エクササイズ ~初級編~】
①へそに手を当てます。
②へそに手を当てながら、「あー」と声を出すイメージで、口を開けて大きく息を吸います。そのとき、お腹が手を押し返すように出ることを確認しましょう。
③お腹が押し返している手の位置そのままで、いったん息を止めます(口は開きっぱな
しでかまいません)。
④ゆっくり10を数えたら、一気に息を吐きます(手で押さえているお腹はへこみます)。
【図版 腹式呼吸エクササイズ】
【腹式呼吸エクササイズ ~上級編~】
①へそに手を当てます。
②へそに手を当てながら、「あー」と声を出すイメージで、口を開けて大きく息を吸います。そのとき、お腹が手を押し返すように出ることを確認しましょう。
③へそに手を当てたまま「はっ」「はっ」「はっ」と3回息を吐きます。そのとき3段階でお腹がへこんでいくことを確認します。ただし息の量は3回とも同じ量で、へこみ方も3等分であることを目指します。「1、2、3」で息を吐いて「4」で息を吸います(4拍子のつもりで行います)。
④②~③を繰り返します。
特に「息を吐くこと」を大事にしながら、腹式呼吸で深くゆっくりと呼吸すると、多くのメリットがあります。
腹式呼吸で増加する「セロトニンの分泌」とは?
【腹式呼吸のメリットとは】
① 副交感神経の働きが高まるなど、自律神経のバランスを整える効果が得られます。
② 副交感神経が働くと、リンパ球が増える効果も期待でき、免疫力が高まる作用も見込
めます。
③ 脳内で気持ちを落ち着かせるセロトニンの分泌が促され、精神の安定につながります。
セロトニンとは、ドーパミンやノルアドレナリンと並んで「三大神経伝達物質」と呼ばれます。脳内で情報を行き来させるときに必要となる物質のひとつです。
これらの神経伝達物質のバランスがよいと、精神的な健康につながります。腹式呼吸を行うと、セロトニン神経が刺激され、セロトニンの分泌が増加するという事実が明らかになっています。
セロトニンには、感情の暴走を抑えるブレーキの役目があります。セロトニンがしっかり分泌されていれば、大きなストレスにさらされたとしても、マイナスの感情をうまく抑えられるようになります。
セロトニンの分泌量が減ると脳内の情報伝達がスムースに行われなくなり、やる気や興味といったポジティブな感情を持ちにくくなってしまいます。またセロトニンは、うつ病と関係が深いともいわれます。うつ病で自殺した人の脳を調べた結果、「セロトニンとノルアドレナリンが減っていた」というデータがあるほどです。