鍛えるという意識がなければ難しい「腹式呼吸」
呼吸には大きく分けて「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の2通りがあります。腹式呼吸とは、意識をしなければ、なかなか行えない呼吸です。胸式呼吸とは、普段、無意識に誰もが行っている呼吸です。
「胸式」も「腹式」もどちらか一方が大事なわけではありません。人間にとっては両方必要な呼吸法です。また1日のうちで時間帯によって、からだがどちらか一方を選びながら行っています。
ただし「腹式呼吸」に関しては横隔膜を使うため、鍛えるという意識がなければ、なかなかうまくできないかもしれません。
そもそも「腹式呼吸」という言葉には「お腹で呼吸をする」「お腹周辺の筋肉を利用して呼吸する」というイメージを持つ人が多いようです。しかしそれは、実は大きな誤解です。正しくいうと、腹式呼吸とは「横隔膜の動きを重点においた呼吸」なのです。
「胸式呼吸」は胸の周辺で行う呼吸法
横隔膜とは、肺の底にある伸縮性の高い筋肉の膜です。この横隔膜の動きを利用して肺に空気を取り入れたり、吐き出したりする呼吸法が、腹式呼吸です。腹式呼吸を意識して行う場合、最初は自分で意識して横隔膜を使うことになります。
やがて慣れてくると横隔膜の動きの範囲が広がります。その結果、肺への酸素供給と吐き出す力が自然に増加します。つまり訓練次第では、より大きく、より強く呼吸を行えることが腹式呼吸の特徴です。
一方「胸式呼吸」とは、文字通り胸の周辺で行う呼吸法です。胸式呼吸では肋間筋を動かすことになります。肋骨はからだの上方に動きやすいため、胸腔が広がり空気をとり込みやすい状態になります。つまり胸式呼吸は息を吸うことに向いており、深呼吸をするのに適しています。
腹式呼吸を試みた場合、最初から完全にうまくできているという人は、ほとんどいません。腹式呼吸のつもりが胸式呼吸になってしまうことはよくありますが、その見分け方があります。深く息を吸おうとしたときに、著しく肩が上がっているかどうかです。
腹式呼吸のとき、本来であれば肺の下にある横隔膜が上下して呼吸をするだけですから、お腹が膨らんだりへこんだりするだけで、肩までは上がらないはずなのです。けれども、呼吸を胸だけで行っている(胸式呼吸をしている)ので、肩が一緒に上がるのです。それは腹式呼吸ではありません。