(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦別姓や家庭内別居など、多様化する夫婦のかたち。夫婦という関係でもお互いの自由は尊重すべきですが、そこに相続が発生すると思わぬデメリットが生じる可能性もあると、株式会社アイポス代表の森拓哉氏はいいます。本記事では、熟年別居中に夫が亡くなった夫婦の事例とともに、別居婚の意外な落とし穴について解説します。

別居から15年…夫が急逝

別居してそれぞれ暮らしながら、仕事にはともに取り組んだ夫婦ですが、別居後も仕事で特段困ることはありませんでした。

 

一方、お互いの生活のことに対しては、細かいことまでは踏み込まなくなっていきました。仕事以外ではあまり接点のないAさんとBさんは、お互いの生活ぶりがわからなくなっていったのです。Bさんは内心ざわつく部分もありましたが、いまある落ち着いた暮らしを手放してまで、Aさんの生活ぶりを詮索する気にもなれなかったのです。

 

そうして15年の月日が流れました。Aさんは65歳で突然の病に倒れ、急逝します。Bさんは、悲しみと複雑な気持ちを抱えながら、Aさん亡きあとの手続きを進めていきます。苦労した事業ではありましたが、周りの仕事仲間も気にかけてくれて、無事に仕事を引き受けてくれるところも決まりそうです。

 

そんな矢先に驚愕の便りが届くことになるのです。

夫が亡くなってから4ヵ月後に判明した衝撃事実

Aさんが亡くなってから4ヵ月が過ぎたころ、見知らぬ名前の弁護士から内容証明が3通ほぼ同じ時期に届きました。恐る恐る開けると、Aさんに貸しているお金を返すよう求める督促状でした。Bさんとしては、なんのことかさっぱりわからず、動揺してしまいました。

 

一人娘に相談したところ、「実はお父さんね、お母さんと別居するようになってから、お金遣いが荒くなったみたいでね。私にもお金の無心があったのよ。言いにくかったから、言わなかったんだけど」というのです。

 

借金の実態ははっきりわからないのですが、Bさんは慌てて弁護士に相談します。相続放棄ができないか相談したのですが、弁護士からの回答は「BさんはAさんの葬儀の際にすでにAさんの預貯金を使われていますね。別居していたとはいえ、一緒に仕事もされています。期間も3ヵ月を過ぎていますから、いまからの相続放棄は認められない可能性があります」というもの。Bさんは意気消沈します。

 

まさか別居を選んだことがこのような結果になるとは、別居を選んだ当時はまったく考えもしませんでした。これから老後を過ごしていこうという段階になり、Aさんと別居して自分の人生を歩んでいたBさんに新たな難問が降りかかってきました。Bさんはどうすればよかったのでしょうか。

 

 

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