(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2023年9月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

7.リート

<現状>

●グローバルリート市場(米ドルベース)は、FRBによる金融引き締めが長期化するとの観測から米国の長期金利が大幅に上昇したことを嫌気して、全面安となりました。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比▲7.0%でした。

 

●米国は、長期金利が大幅に上昇したことや、株式市場が調整したことを受けて大きく下落しました。欧州も、長期金利が急上昇したことから軟調な展開となりました。日本やアジア・オセアニアも、長期金利が上昇したことを受けて、下落しました。

 

<見通し>

●グローバルリート市場は、長期金利の高止まりから当面振れの大きい展開が見込まれますが、FRBの利上げが最終局面に近いとみられるなか、長期金利がピークアウトすれば、中期的には緩やかに上昇するとみています。

 

●米国は、FRBの利上げが最終局面に近いとみられるなか、中期的には底堅い景気を背景に持ち直すとみています。欧州は、景気の停滞から当面上値の重い展開を想定します。日本やアジア・オセアニアは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。

 

グローバルリートの推移

8.まとめ

【債券】

●米国の長期金利は、当面高止まりするものの、先行きは緩やかに低下する展開を予想します。堅調な雇用による景気の底堅さからFRBの金融引き締めは当面続くとみられます。ただし、利上げは最終段階にあると考えられ、先行きは景気減速とインフレの低下が見込まれるためです。

 

●欧州の長期金利も、ECBの利上げサイクルが最終段階に差し掛かっているとみられ、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。

 

●日本の長期金利は、日銀のYCC修正により、追加の政策修正は当面行われないとみられることから、レンジ内でもみ合う展開を予想しています。

 

【株式】

●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は7-9月期が前年同期比+1.6%、除くエネルギーセクターは同+6.7%となる見通しです。10-12月以降も増益率の上昇が予想されています。(リフィニティブ集計、9月29日現在)。一方、TOPIX採用企業の7-9月期の純利益は同+19.2%の見通しです(Bloomberg集計、10月2日現在)。2023年度も日本の企業業績は増益が予想されています。

 

●米国株式市場はレンジを緩やかに切り上げる展開が予想されます。FRBの金融政策に不透明感はあるものの、予想EPSの改善は持続しており、緩やかな上昇が継続しそうです。一方、日本株式市場は、世界経済の停滞に対する警戒感が依然燻るなかで振れが大きくなる局面もありそうですが、欧米の金融引き締めの着地点が見え、景気循環が停滞から脱し始めることで、再び株価上昇に向かうと予想されます。

 

【為替】

●円の対米ドルレートは、日米の金利差から当面弱含むものの、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから、もみ合う展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBによる利下げが意識され、円が小幅に上昇すると想定しています。

 

●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きの欧州金利の低下による金利差縮小により小幅に上昇するとみています。

 

●円の対豪ドルレートも、当面もみ合うものの、小幅に上昇する展開を予想しています。中国経済の減速により豪州景気が抑制されるためです。

 

【リート】

●グローバルリート市場は、長期金利の高止まりから当面振れの大きい展開が見込まれますが、FRBの利上げが最終局面に近いとみられるなか、長期金利がピークアウトすれば、中期的には緩やかに上昇するとみています。

 

●米国は、FRBの利上げが最終局面に近いとみられるなか、中期的には底堅い景気を背景に持ち直すとみています。欧州は、景気の停滞から当面上値の重い展開を想定します。日本やアジア・オセアニアは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。

 

 

(2023年10月3日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【データ解析】日本株式市場は再び「株価上昇」に向かうと予想される。「9月のマーケット」振り返り(三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジストが解説)』を参照)。

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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