5.企業業績と株式
<現状>
●S&P500種指数の9月の予想1株当たり利益(EPS)は241.0で、15ヵ月ぶりに過去最高水準を更新しました。前年同月比は+1.8%、前月比は+0.6%でした。TOPIXの予想EPSは166.6、前年同月比は同+5.7%、前月比は+1.1%と増益基調が続いています。
●9月の米国株式市場は調整しました。FOMCで利上げは行われなかったものの、政策金利の見通しが上方修正されたことや原油高などから金融引き締めの長期化か懸念されたことを背景に、米長期金利が上昇し続けたことが嫌気されました。一方、日本株式市場は、前半は中国景気に対する不安感が和らいだことなどで上昇したものの、後半は米国株式市場の調整を受けて下落しました。
<見通し>
●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は7-9月期が前年同期比+1.6%、除くエネルギーセクターは同+6.7%となる見通しです。10-12月以降も増益率の上昇が予想されています。(リフィニティブ集計、9月29日現在)。一方、TOPIX採用企業の7-9月期の純利益は同+19.2%の見通しです(Bloomberg集計、10月2日現在)。2023年度も日本の企業業績は増益が予想されています。
●米国株式市場はレンジを緩やかに切り上げる展開が予想されます。FRBの金融政策に不透明感はあるものの、予想EPSの改善は持続しており、緩やかな上昇が継続しそうです。一方、日本株式市場は、世界経済の停滞に対する警戒感が依然燻るなかで振れが大きくなる局面もありそうですが、欧米の金融引き締めの着地点が見え、景気循環が停滞から脱し始めることで、再び株価上昇に向かうと予想されます。
6.為替
<現状>
●円の対米ドルレートは、下落傾向が続きました。FRBの金融引き締めが長引くとの見方から米長期金利がほぼ16年ぶりの水準に上昇し、日米金利差の拡大を背景とした円売り・ドル買いが強まりました。円は昨年10月以来の149円台で終了しました。
●円の対ユーロレートは、158円近辺で終了し、横ばいでした。欧州経済の相対的な弱さが意識されたことから、ユーロも対米ドルで下落しました。
●円の対豪ドルレートは、日本と豪州の金利差が意識されて円売りが強まり、下落しました。
<見通し>
●円の対米ドルレートは、日米の金利差から当面弱含むものの、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから、もみ合う展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBによる利下げが意識され、円が小幅に上昇すると想定しています。
●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きの欧州金利の低下による金利差縮小により小幅に上昇するとみています。
●円の対豪ドルレートも、当面もみ合うものの、小幅に上昇する展開を予想しています。中国経済の減速により豪州景気が抑制されるためです。