1.概観
【株式】
9月の主要国の株式市場は、世界的に長期金利が大きく上昇したことを受けて、概ね下落しました。米国株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの観測や、政府機関の閉鎖懸念から米長期金利が大幅に上昇したことを受けて軟調な展開となりました。欧州の株式市場は、景気が低迷するなかでも欧州中央銀行(ECB)による金融引き締め局面が長引くとの観測から下落しました。日本の株式市場は、月中旬にかけて上昇したものの、米国株の下落を受けて月末にかけて値を崩し、安値で引けました。中国株式市場は、中国不動産市場の低迷による信用不安などを嫌気して、上海総合指数、香港ハンセン指数ともに続落しました。
【債券】
米国の10年国債利回り(長期金利)は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で参加者の政策金利見通し(ドットチャート)がタカ派的だったため、FRBが高水準の政策金利をより長く維持するとの観測が強まり、16年ぶりの水準に上昇しました。ドイツの長期金利は、ECBによる金融引き締め局面が長引くとの観測から12年ぶりに上昇しました。日本の長期金利は、日銀による早期の緩和修正観測から10年ぶり水準に上昇しました。
【為替】
円の対米ドルレートは、米長期金利が大幅に上昇し、日米金利差の拡大を背景とした円売り・ドル買いが強まったことから続落し、149円台で終了しました。
【商品】
原油価格は、サウジアラビアやロシアの減産が続くなかで、世界的に原油需給の引き締まりが意識されたことなどから買いが膨らみ、大きく上昇しました。
2.景気動向
<現状>
●米国景気は、FRBの利上げが続くなかでも、失業率が3.8%にとどまるなど堅調な雇用を背景にした個人消費に支えられ、底堅い動きを続けています。
●欧州(ユーロ圏)の景気は、9月の購買担当者景況指数(PMI)が下振れるなど、製造業を中心に景気の減速感が強まっています。
●日本の4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.8%と、インバウンド消費を含む輸出の増加が全体を押し上げており、回復基調が続いています。
●中国景気は、住宅販売の下げ幅が拡大するなど、不動産市場の一段の悪化により経済指標は力強さを欠いており、景気回復ペースの鈍化が鮮明です。
●豪州の4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.1%と、前期から減速しました。輸出や投資が伸びたものの、個人消費の伸びが鈍化しました。
<見通し>
●米国は、これまでの大幅な利上げに伴う景気抑制効果から、経済が減速するとみられます。ただし、雇用が安定しており、個人消費が底堅いことやインフレが鈍化していることから、景気の腰折れは回避されるとみられます。米景気は低水準ながらプラス成長を続ける見通しです。
●欧州は、緩慢な回復が続くとみられます。ECBの金融引き締めによる景気抑制効果が強まるものの、財政の支援、エネルギー価格の安定、コロナ下で積み上がった貯蓄、労働市場の安定、インフレのピークアウトなどが景気を支えるとみています。
●日本は、インバウンド消費の回復、設備投資の増加、供給制約の緩和に加え、底堅い米景気を背景とした輸出増を支えに、緩やかな景気回復が続く見通しです。ただし、24年前半にかけては欧米や中国など海外景気の減速により、回復ペースが鈍化するとみています。
●中国は、ゼロコロナ政策終了による経済正常化に向けた動きで年前半は景気回復ペースが高まりましたが、年後半以降は不動産市場の低迷や海外景気の減速、若年層の雇用悪化の影響で回復ペースが鈍化するとみています。
●豪州は、海外景気の減速やインフレによる消費への下押し圧力を受けて成長率が鈍化するものの、緩やかな景気回復の流れが続く見通しです。中国経済が減速するとみられるものの、企業の投資意欲、良好な雇用環境、コロナ下で積み上がった貯蓄などが、豪州経済を支えるとみています。