今月の注目点…米金利の行方“不吉の10月”アノマリーにも注意
以上を踏まえると、円安が経験的な限界圏に達しているなかで「米金利上昇を受けた米ドル高・円安は続くのか」が、10月の最大の焦点となるでしょう。
これまで見てきたように、予想以上に強い可能性の米景気が、ここまで予想以上の米金利上昇をもたらしたと考えられます。ただしそれは、さらに米金利上昇が続くことを意味するものではありません。では、改めて米金利上昇はまだ続くのでしょうか?
米10年債利回りの90日MAかい離率を見ると、同かい離率がプラス20%以上に拡大すると短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まりますが、足元ではまだそこまでには至っていないことから、米景気指標の結果などを受けて米10年債利回りが短期的な「上がり過ぎ」拡大に向かう可能性は残っているようです(図表5参照)。
ただし、米10年債利回りの5年MAかい離率はプラス100%まで拡大し、中長期的には異例の「上がり過ぎ」の可能性がありそうです(図表6参照)。
要するに、米10年債利回りの上昇トレンドは、循環的にはいつ終ってもおかしくない状況が続いているものの、足元ではこれまで見てきたように「予想以上に強い米景気」を示す結果が続くなか、金利上昇終了、低下への転換の「きっかけ」がつかめずに来たということでしょう。
では、10月もまだ「転換のきっかけ」がつかめない状況が続くのでしょうか。
10月のアノマリー、要するに季節性からすると、米金利が低下へ転換する「きっかけ」は十分あるでしょう。10月は経験的に「記憶に残る株価暴落が多い」タイミングということがあるためです。
10月の「暴落相場」の代表は、1987年10月、NY発世界同時株暴落、「ブラックマンデー」でしょう。
そして大昔、世界恐慌のトリガーになった「暗黒の木曜日」の株暴落もやはり10月に起こりました。さらに、2008年「リーマン・ショック」の最大の暴落相場が起こったのも10月。株ではなく米ドル/円の記録的暴落、1998年にたった3日間で米ドル/円が30円近くの大暴落となったのもやはり10月だったのです。
今回も、米国では自動車業界のストライキなど、米景気へのネガティブ材料が残っています。それらをきっかけに「不吉の10月」が再来、米金利が低下に向かう可能性はあるでしょう。
以上見てきたように、10月の最大の焦点は、すでにトレンドとしては限界圏に達している「米金利上昇=米ドル高・円安」が転換のきっかけをつかめるか、ということになるでしょう。
米ドル/円が、2022年に記録した151円の高値に迫るなかでは、日本の通貨当局の円安阻止介入再開も、米ドル高・円安転換の手掛かりになる可能性は続いていると考えられます。
以上を踏まえた上で、10月の米ドル/円の予想レンジは、2022年の米ドル高値更新が微妙な中で米ドル反落に転じるリスクを想定し、144~152円中心で考えてみたいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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