「円安」はもう限界?…為替のプロが「1ドル151円超の円安は起きない」と予想するこれだけの理由【不吉の10月】

10月の「FX投資戦略ポイント」

「円安」はもう限界?…為替のプロが「1ドル151円超の円安は起きない」と予想するこれだけの理由【不吉の10月】
(※画像はイメージです/PIXTA)

パウエルFRB議長が9月FOMC後の会見で「米経済は予想以上に強い」と語ったように、圧倒的な米経済の好調さを背景に「米ドル高・円安」が続く為替市場。ただ、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は足元の円安相場について「2022年の円最安値“1ドル151円”を更新する可能性は低い」「米ドル高・円安の相場は限界に近い」といいます。その根拠とは……詳しくみていきましょう。

今月の注目点…米金利の行方“不吉の10月”アノマリーにも注意

以上を踏まえると、円安が経験的な限界圏に達しているなかで「米金利上昇を受けた米ドル高・円安は続くのか」が、10月の最大の焦点となるでしょう。

 

これまで見てきたように、予想以上に強い可能性の米景気が、ここまで予想以上の米金利上昇をもたらしたと考えられます。ただしそれは、さらに米金利上昇が続くことを意味するものではありません。では、改めて米金利上昇はまだ続くのでしょうか?

 

米10年債利回りの90日MAかい離率を見ると、同かい離率がプラス20%以上に拡大すると短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まりますが、足元ではまだそこまでには至っていないことから、米景気指標の結果などを受けて米10年債利回りが短期的な「上がり過ぎ」拡大に向かう可能性は残っているようです(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米10年債利回りの90日MAかい離率(2010年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

ただし、米10年債利回りの5年MAかい離率はプラス100%まで拡大し、中長期的には異例の「上がり過ぎ」の可能性がありそうです(図表6参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米10年債利回りの5年MAかい離率(1980年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

要するに、米10年債利回りの上昇トレンドは、循環的にはいつ終ってもおかしくない状況が続いているものの、足元ではこれまで見てきたように「予想以上に強い米景気」を示す結果が続くなか、金利上昇終了、低下への転換の「きっかけ」がつかめずに来たということでしょう。

 

では、10月もまだ「転換のきっかけ」がつかめない状況が続くのでしょうか。

 

10月のアノマリー、要するに季節性からすると、米金利が低下へ転換する「きっかけ」は十分あるでしょう。10月は経験的に「記憶に残る株価暴落が多い」タイミングということがあるためです。

 

10月の「暴落相場」の代表は、1987年10月、NY発世界同時株暴落、「ブラックマンデー」でしょう。

 

そして大昔、世界恐慌のトリガーになった「暗黒の木曜日」の株暴落もやはり10月に起こりました。さらに、2008年「リーマン・ショック」の最大の暴落相場が起こったのも10月。株ではなく米ドル/円の記録的暴落、1998年にたった3日間で米ドル/円が30円近くの大暴落となったのもやはり10月だったのです。

 

今回も、米国では自動車業界のストライキなど、米景気へのネガティブ材料が残っています。それらをきっかけに「不吉の10月」が再来、米金利が低下に向かう可能性はあるでしょう。

 

以上見てきたように、10月の最大の焦点は、すでにトレンドとしては限界圏に達している「米金利上昇=米ドル高・円安」が転換のきっかけをつかめるか、ということになるでしょう。

 

米ドル/円が、2022年に記録した151円の高値に迫るなかでは、日本の通貨当局の円安阻止介入再開も、米ドル高・円安転換の手掛かりになる可能性は続いていると考えられます。

 

以上を踏まえた上で、10月の米ドル/円の予想レンジは、2022年の米ドル高値更新が微妙な中で米ドル反落に転じるリスクを想定し、144~152円中心で考えてみたいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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