(※写真はイメージです/PIXTA)

資生堂やKDDI、リコーなどの大手企業が導入したことで、近年注目を浴びる「ジョブ型人事制度」。従来の雇用制度「メンバーシップ型人事制度」との違いは、最初から適材適所で働くことができる点にあります。本記事では、「ジョブ型人事制度」のメリットとデメリット、具体的な導入方法について、仕組み経営株式会社の取締役・清水直樹氏が解説します。

ジョブ型人事制度の導入方法

ジョブ型人事制度の仕組みを構築するには、大きくわけて6つのステップがあります。

 

1.ジョブ型人事制度の適用範囲を検討する

ジョブ型人事制度は、従来の新卒一括採用に代表される日本特有の仕組みとは根本が異なるので、すべてのメンバーを一気にジョブ型人事制度に切り替えることには大きな負荷が伴います。 これを防ぐため、すべてのメンバーにジョブ型を導入せずに、管理職はジョブ型・一般社員はメンバーシップ型に、という人事制度を構築している会社もあります。

 

2.ジョブ・ディスクリプションに職務を記述する

次に、ジョブ・ディスクリプション=職務記述書を活用して全職種の職務を洗い出していきます。 ジョブ・ディスクリプションに記述する内容には以下のようなものがあります。

 

〇職種・職務名・職務等級

〇職務概要・具体的な職務内容・各職務のウェイト

〇期待されるミッションと目標

〇組織との関係

〇直属の上司・部下、責任・権限の範囲

〇雇用形態、勤務地、勤務時間など

〇必要とされる知識・スキル・資格

〇待遇・福利厚生

 

「手間がかかる……」と感じる方も多いと思いますが、なるべく内容をコンパクトにまとめて、変更や修正を簡単に行えるように、柔軟性を確保しておきましょう。

 

職種を記述するには、従業員自らが自分の職務を書き出す「記述法」と、上司とヒアリングする「面接法」がありますが、いずれにしても、求めるミッション(役割や目標)やタスクを明確にすることが必須となります。

 

3.職務を評価し、価値を測定する

ジョブ・ディスクリプションに記述した職務を、社内における仕事の重要度と市場における価値から評価し、職務の価値(ジョブサイズ)を測定します。職務評価の方法には大きくわけて「直観法」と「要素比較法」の2つがあります。

 

・直観法

意思決定者が総合的な観点から感覚的に判定・序列化します。手間やコストを省くことができますが、社員への説明責任を果たしにくく透明性にも欠けます。さらに、意思決定者が個々の職務を熟知していることが求められます。

 

・要素比較法

職責を「求められる知識と経験」「問題解決」「達成責任」といった要素に分解して、職務価値を点数として算出します。評価者はジョブ・ディスクリプションなどの内容をもとに、職務のレベルを判定します。

 

4.職務価値(ジョブサイズ)を等級にわける

職種別に職務価値(ジョブサイズ)の等級を区分します。等級が細かすぎると柔軟な異動を阻害しますが、逆に粗すぎるとジョブ型人事制度導入の意味合いが薄れてしまいます。異動が頻発する層が発生する可能性があれば、その層については等級を括ることも検討します。

 

5.職務と賃金を紐付ける

職務へ等級に応じた賃金を設定しますが、賃金の根拠は自社の報酬基準ではなく、市場の相場に応じたものにすることが不可欠です。日本は新卒一括採用と年功序列に基づく報酬制度を続けてきたことで、相場報酬の情報が乏しいのが特徴です。しかし、採用において競争優位を持つためには、業種別・職種別の報酬相場を踏まえ、職務に適正な賃金を紐付けることが不可欠となります。

 

6.ジョブ・ディスクリプションを定期的にメンテナンスする

ジョブ・ディスクリプションを作成することでミッションやタスクが明確になり、評価時にも齟齬が生じにくくなります。一方、経営環境や時代の変化に対応しにくくなるといった問題もあります。

 

このため、ジョブ・ディスクリプションは適切な頻度でメンテナンスしなければ形骸化してしまい、ジョブ型人事制度導入の意義が失われます。少なくとも5年に1度程度を下回らないように注意しましょう。

 

ジョブ・ディスクリプションをメンテナンスしていくのは現場です。人事担当者から現場担当者に徹底を促し、適切なメンテナンスを行うことで、ジョブ型人事制度は真価を発揮することができるのです。

ジョブ型人事制度のメリットを最大化するには

ジョブ型人事制度の導入は、効果的な人材採用だけではなく、企業の収益性と組織生産性の向上にも直結します。ただし、メリットを最大化するためには、ジョブ・ディスクリプションの作成や、適切な人事評価の仕組みづくりが不可欠となります。

 

 

清水 直樹

仕組み経営株式会社

代表取締役

 

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