(※写真はイメージです/PIXTA)

資生堂やKDDI、リコーなどの大手企業が導入したことで、近年注目を浴びる「ジョブ型人事制度」。従来の雇用制度「メンバーシップ型人事制度」との違いは、最初から適材適所で働くことができる点にあります。本記事では、「ジョブ型人事制度」のメリットとデメリット、具体的な導入方法について、仕組み経営株式会社の取締役・清水直樹氏が解説します。

ジョブ型人事制度が注目される理由

「ジョブ型人事制度」という言葉が日本で聞かれるようになったのは2020年ごろからですが、なぜこのようなタイミングでジョブ型人事制度が注目されるようになったのか、その背景を見ていきましょう。

 

ダイバーシティの浸透と働き方の多様化

最初に、世界的なダイバーシティへの取り組みの歴史を振り返り、ジョブ型人事制度が広く導入されることになった背景を紐解いていきます。

 

1960年代にアメリカで起こった公民権運動に端を発し、人種や宗教、思想の違いを認め合う理念が育ち始めました。さらに女性の社会進出も活発になり、1980〜1990年代にかけてアメリカではダイバーシティを尊重する流れが生まれました。

 

その後を追うように、日本でも1990年代から女性の社会進出が始まり、2010年代には政府が女性活躍推進法を施行、それによって日本でもダイバーシティや働き方の多様化が浸透していきました。転職や副業などに対するハードルが下がり、従来の終身雇用制のデメリットが表面化しました。企業にとっては、メンバーシップ型雇用制度を維持することが困難となったわけです。

 

リモートワークの普及による成果主義の広がり

さらに、2019年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本でも2020年以降、リモートワークが急速に普及することになりました。これによって、日本が得意としてきた対面での人材マネジメントの仕組みも変更を余儀なくされます。

 

また、時間や場所にとらわれない働き方が普及し、成果を出す人と出さない人の差が明確になりました。そのため、採用後に職場に配置しながら適性を見ていくという、従来のメンバーシップ型雇用制度よりも、求められる職務ができる人を必要な部署へアサインする、ジョブ型人事制度が注目されるようになりました。

 

グローバルスタンダードへの対応と人材獲得競争の激化

2000年代以降、IT技術の急速な進歩によって、世界中の優秀な人材を見つけることが可能になりました。また、リモートワークが普及したことで、国籍や住所にかかわらず採用できる環境にもなりました。

 

そうした背景から、有力なグローバル企業は世界中から優秀なエンジニアなどの人材を集めるようになり、世界的な人材獲得競争が起きているわけです。たとえばFacebookやGoogleなどの世界的なIT企業は、数多くのインド人学生をエンジニアとして採用しています。

 

このような、世界規模で行われる人材獲得競争に対応するために、日本企業もグローバルスタンダードであるジョブ型雇用制度を導入する必要に迫られています。こういった社会環境の変化を背景にして、日本でもジョブ型人事制度が注目され始めているわけです。

 

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