【歴史】〈アメリカ合衆国〉はいかにして生まれたのか…リンカン大統領「奴隷解放宣言」の裏にあった“狡猾な打算”

【歴史】〈アメリカ合衆国〉はいかにして生まれたのか…リンカン大統領「奴隷解放宣言」の裏にあった“狡猾な打算”
(※写真はイメージです/PIXTA)

19世紀末から世界の覇権を握る「アメリカ合衆国」ですが、その成り立ち・歴史について、実は「なんとなくしか理解していない……」という人は少なくありません。そこで今回『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者である河合塾講師の平尾雅規氏が、アメリカ合衆国のはじまりと発展にある歴史の“表と裏”を解説します。

「北部:連邦主義」と「南部:反連邦主義」に分裂

東海岸の方では、北部と南部で方向性の違いが明らかになってきました。まず温暖な南部では、ヨーロッパでは栽培できない商品作物(タバコ・綿花など)を栽培できるので、イギリスなどヨーロッパへの輸出でカネを稼げます。

 

一方、イギリス人としては世界一の工業製品をアメリカにも買ってもらいたい。「お互い自由に貿易をしようぜ! win-winだ」と利害が一致します。

 

逆に、寒冷な北部は商品作物も栽培できず資源も乏しい……。でも米英戦争の頃から工業化がスタートしていて「いつかはイギリスのレベルに追いつきたい……」と高い志を持ちました。そこで北部は合衆国全体を1つの経済圏としてとらえ、国全体で保護貿易を推進しようとしました

 

そうすればイギリス製品を遮断して北部の製品を南部に売り込み、北部の資本家が力を伸ばせます。でも、南部の人間は反発しますよ。「なぜ世界一のイギリス製品の価格を関税でつり上げて、粗悪な国産品を買わなきゃいかんのだ!」と考えますからね。

 

続いて、「連邦主義」がカギになってきます。アメリカの連邦政府に関税を課す権限を認めれば、合衆国全ての州に流入する外国製品に関税がかかります。北部はこれを求めました。

 

しかしアメリカでは「州政府の独立性を尊重し、連邦政府の権限は制限されるべき」という考え方が根強かったですから、南部は「関税を課すかどうかは州レベルで決める。連邦政府がイギリス製品に関税を課した結果、我々南部の人間が品質にも劣る割高な国産品を買わされるのは不当だ!」と訴えました。

 

「北部はアメリカ全体で保護貿易を行いたいから連邦主義」、「南部は自由貿易を行いたいから反連邦主義(州権主義)」という構造が分かればOKです。

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表]連邦政府の権限を「強化した場合」と「制限した場合」 出所:『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より抜粋

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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