【歴史】〈アメリカ合衆国〉はいかにして生まれたのか…リンカン大統領「奴隷解放宣言」の裏にあった“狡猾な打算”

【歴史】〈アメリカ合衆国〉はいかにして生まれたのか…リンカン大統領「奴隷解放宣言」の裏にあった“狡猾な打算”
(※写真はイメージです/PIXTA)

19世紀末から世界の覇権を握る「アメリカ合衆国」ですが、その成り立ち・歴史について、実は「なんとなくしか理解していない……」という人は少なくありません。そこで今回『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者である河合塾講師の平尾雅規氏が、アメリカ合衆国のはじまりと発展にある歴史の“表と裏”を解説します。

「奴隷制」を巡り対立…「南北戦争」が開戦

続いて奴隷制の問題。奴隷制に対するニーズが高かったのは、単純な肉体作業が求められる南部のプランテーションでした。

 

一方、黒人奴隷を用いることが定着していなかった北部は、人道的な観点から奴隷制に反対します。

 

このいざこざからホイッグ党を前身とする共和党が成立し、1860年の大統領選挙ではその共和党のリンカンが当選しました。

※ 民主党は、1820年代にジャクソン支持派が結成

 

南部はついに合衆国から離脱してアメリカ連合国の成立を宣言しますが、リンカンはこれを認めませんでした。北部製品を南部に売り込むためには、南部を合衆国(の連邦政府内)にとどめておく必要があるからです。

 

ついに、合衆国史上で最大の犠牲者を出した南北戦争が開戦。前半は南軍が優勢な中、リンカンは考えました。仮にイギリスが南北戦争に介入するとしたら、自由貿易を推奨する南部に加勢するのではないかと。

 

そこでリンカンは奴隷解放宣言を発して、奴隷問題をクローズアップさせ、「北は奴隷制を否定する正義の味方であり、南はいまだに奴隷制を続ける悪の勢力である!」というイメージを国際社会に植えつけた。

 

こんな情勢で、イギリスは南部を支援できるはずもなく、戦局は北部有利に傾き、ゲティスバーグの激戦も制してなんとか勝利につなげました。

 

南北戦争後の状況ですが、解放された黒人への差別は続きます……。憲法レベルでは黒人の市民権も認められるのですが、そこは州が自立している合衆国。州法によってあの手この手で参政権を制限します

※ 投票税を払わせたり、読み書きテストを課したりした

 

黒人農民には土地を買うような経済力もなく、地主に対する高額の小作料に苦しみ、またKKK(クー=クラックス=クラン)のような黒人を迫害する組織も生まれました。

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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