(※写真はイメージです/PIXTA)

1990年代に日本が、2000年代に米国がそれぞれ経験している不動産バブル。しかし、その後の2国には大きな違いがあると、フィデリティ・インスティテュートの首席研究員・重見吉徳マクロストラテジストはいいます。「不況が長引いた日本」と「すぐに立ち直った米国」の差はいったいなんなのか、みていきましょう。

日本が不良債権処理に「約12年」かかったワケ

景気の低迷と不動産価格の下落は、売上や所得の減少と融資の担保価値の下落によって、金融機関のバランスシートに不良債権を蓄積させます。

 

家計や企業は借り入れの返済を急ぎ、金融機関は新規融資のための体力がなくなり、新たな借り入れ(=支出)を控えられることで、景気は収縮し、これが資産価格のさらなる下落を招く、いわゆる「バランスシート不況(負債デフレ)」を引き起こします。1930年代の米国と1990年代の日本がこれに該当します。

 

日本が不良債権の抜本的な処理に約12年もの時間を要した背景は、①景気回復への淡い期待、②銀行経営者や金融当局による責任逃れ、③世論の反対と政権・国会の逡巡などが挙げられます(→たとえば、西野智彦著『平成金融史』中公新書などを参照されてください)。

 

日本の場合、金融機関による不良債権処理を先送りにしたため、与信の抑制と景気の低迷が続きました。これが、低インフレ期待につながったとみられます。デフレは家計や企業による債務の返済を困難にします。

 

バランスシート不況を防ぐための主要な処方箋は、「金融機関による損失の早期計上」とこれを可能にする「増資(公的資本の投入)」です。また、債務の借り換えや公的資本の投入を容易にする「金融緩和」です。

 

レイ・ダリオが提唱する、“美しいディレバレッジ”をもたらす「4つのレバー」

ちなみに、レイ・ダリオは、世界の過去48件の債務危機を調べた著書のなかで、

 

1.(債務を減らすための)緊縮

2.(経済を刺激し続けるための)貨幣発行

3.(将来の信用と成長を回復軌道に乗せるための)デフォルト/債務再編

4.(『持てる者』の救済を一部相殺するための)富の再分配

 

の4つの「レバー」がバランスよく働くときに、『美しいディレバレッジ』(“beautiful deleveraging”)が生じて、債務危機は収束すると整理しています。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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【参考文献】
・Ray Dalio (2018,2022) “Principles for Navigating Big Debt Crises”, Bridgewater Associates, Avid Reader Press / Simon & Schuster

・西野智彦 (2019) 『平成金融史-バブル崩壊からアベノミクスまで』中公新書、中央公論社

・リチャード・クー (2013) 『バランスシート不況下の世界経済』徳間書店

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