(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年頃からメディアなどで騒がれている中国の「不動産バブル崩壊」。たしかに昨年以降、中国からは資本が流出傾向にあると、フィデリティ・インスティテュートの首席研究員・重見吉徳マクロストラテジストはいいます。今後の中国の景気や不動産市況と、中国の“日本化”(≒日本のような長期停滞や緩やかなデフレ継続となるのか)についてみていきましょう。

中国不動産市況悪化…“日本化”する可能性はあるか

「中国の日本化」について考える標準的な方法は、「①バブル崩壊直前の日本と、②現在の中国とを比べて類似点や相違点を探す」方法かもしれません。たとえば、「人口のピーク」や「総信用のGDP比」などです。

 

[図表1]総人口に占める40~44歳人口の割合
[図表1]総人口に占める40~44歳人口の割合

 

[図表2]民間非金融部門に対する総信用(GDP比)
[図表2]民間非金融部門に対する総信用(GDP比)

不動産バブルの原因は「金融緩和」と「ミドル層の人口増」

バブル崩壊に至る過程やバブル発生の要因はだいたい同じです。とくに不動産のバブルは、①金融緩和があり、②おおむね、家を持つ年齢の人口の割合がピークに達する頃に生じがちです。

 

[図表3]日本の40~44歳人口比率と不動産価格
[図表3]日本の40~44歳人口比率と不動産価格

 

[図表4]中国の40~44歳人口比率と不動産価格
[図表4]中国の40~44歳人口比率と不動産価格

 

30代や40代など、持ち家を取得する年齢に近い人たちが増えると、住宅への需要が高まります。合わせて、住宅への需要は、道路や鉄道、学校などのインフラの建設や、自動車や家財、家電製品への需要を促すほか、住宅以外の不動産価格も押し上げることが予見されます。

 

ただ、インフラは往々にして、インフラ需要のピーク水準を満たすべく、供給されがちです。

 

なぜなら、たとえば、満員電車や渋滞は利用者の効用を下げたり、経済活動に無駄を生じさせたりしますし、学校では(1クラスあたりの人数が増えるなどの)教育環境の悪化が反対され、むしろ逆に向上が求められるためです。

 

あるいは、たとえ住宅などの供給に過剰感が認知されていたとしても、(前年を上回る)投資の水準や売上高、経済成長が「好まれる」ためです。

 

しかし、10年、20年と過ぎ、人口動態が高齢化すると、それらの資本ストックは過剰になります。そして、投資が収益を生まなくなると、投資の裏付けである債務を中心として「逆回転」が始まります。アーヴィング・フィッシャーの「負債デフレ」やリチャード・クー氏のいう「バランスシート不況」です。

 

すなわち、

 

①債務者が資産バブルの崩壊や不況に直面して「債務の削減を最優先にする」ようになり

②担保資産の売却や支出の削減が資産価格のさらなる下落や一般物価の下落を招き

③実質ベースの債務が増えて、経済全体がデフレ・スパイラルに陥る

 

ような状況です。

 

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【参考文献】
・Ray Dalio (2018,2022) “Principles for Navigating Big Debt Crises”, Bridgewater Associates, Avid Reader Press / Simon & Schuster

・西野智彦 (2019) 『平成金融史-バブル崩壊からアベノミクスまで』中公新書、中央公論社

・リチャード・クー (2013) 『バランスシート不況下の世界経済』徳間書店

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