ポートフォリオの傾向を「プロ野球の球団経営」にたとえると…
米メジャー・リーグでは、毎年7月を過ぎると、プレーオフに進出できそうなチームと、難しそうなチームのあいだで経営戦略が分かれます。
プレーオフに進出できそうなチームはトレードで即戦力を獲得し、代わりに将来有望な若手(→「プロスペクト」と呼ばれる)を放出します。プレーオフ進出を争うライバル・チームも同じ動きをして補強を試みるので、自分たちもそうせざるを得ない「囚人のジレンマ」(ゲーム理論の主要な示唆のひとつ)が生じます。
たとえば、ロサンゼルス・エンゼルスは8月1日のトレード期限までに8人の選手を補強し、若手を放出しました。仮に補強をせず、逆に今シーズンで契約が切れてフリー・エージェントになる大谷翔平選手をトレードに出せば、将来有望な若手数名を獲得できました。
しかし、エンゼルスは今シーズンのプレーオフ進出に賭けて彼を残留させました*。こうしたチームは「いまを重視している」といえるでしょう。*大谷選手との契約延長への期待も残留や補強に影響したでしょう。
他方で、プレーオフ進出が難しそうなチームはトレードで即戦力を手放し、代わりに将来有望な若手を獲得します。
今年はニューヨーク・メッツの決断が話題になりました。メッツは一昨年と昨年オフに大金をかけ、ともにサイ・ヤング賞(→年間最優秀投手に贈られる賞)を3回獲得した2人の剛腕、マックス・シャーザー投手とジャスティン・バーランダー投手と契約、今シーズンのワールド・シリーズ進出を目指しました。
しかし、チームは精彩を欠き、早くも6月にプレーオフ進出が「望み薄」と判断すると、8月1日のトレード期限までに両投手を相次ぎ放出しました。現在は、2025年以降のワールド・シリーズ進出を目指し、有望な若手を獲得・育成するとして方針転換しています。こうしたチームは「将来を重視している」といえるでしょう。