(※写真はイメージです/PIXTA)

元受刑囚や生活保護受給者、元ヤクザや自己破産者、DV避難者など「ワケあり」な人たちに部屋を貸す大家のことを、ライター兼フリージャーナリストの春川賢太郎氏は「エクストリーム大家」と呼んでいます。本稿では春川氏の著書『エクストリーム大家』から一部を抜粋し、「無風」の入居者と過ごした日々は「実につまらなかった」と回顧する著者が、刺激的で「キャラの濃い」入居者と出会うための方法を解説します。

エクストリーム大家ならではの客付け黄金コース

エクストリーム大家業を営んでいた亡き母の日記に、こんなメモ書きがある。

 

〈不動産屋→物件購入と宅建の関連業務〇、管理×、客付け×〉

 

このメモにある宅建=宅地建物取引業務とは、いわゆる宅建者(今は宅建士)のこと。

 

その文字通り、宅地や建物の売買の際に書類を作成したり重要事項を説明したりする専門職だ。

 

この資格がなければ宅地、建物の売買ができないかといえばそうではない。個人もしくは法人が自社の建物や宅地を他人に貸す場合は、とくにその資格は必要ないのだ。

 

それでもやはりプロに頼んだほうが書類の作成では漏れがないと、亡き母は考えたのだろう。多くの取引で町の不動産屋さんに「契約時の宅建業務(書類作成)」をお願いしていたようだ。

 

筆者は、ある警察官の入居の際に、一度だけこの業務をお願いした。だが、その後はプロに頼っていない。結局のところ、この書類作成にも5万円ほどの費用がかかるからだ。だから、書類作成も筆者はすべて自分で行っている。費用はかからない。

 

それにしても、この警察官氏の入退居は、大家としては実につまらない体験だった。

 

客付けした不動産会社が言うように、「お堅い職業の人」だけあって家賃滞納の心配はない。もちろんトラブルもなかった。だからだろう。この無風のお客様と過ごした時間は、正直、筆者の中で何も残っていないのだ。

 

他のワケありな人たちとは違い、この警察官氏とは常日頃、接することがなかったからだろう。

 

もちろん、こちらから積極的にアプローチしていくこともできたかもしれない。だが、一般的に大家が入居者に声掛けし、密にコミュニケーションをとることは、今の世の中、ほとんどないだろう。だから、筆者もそれをすることは憚られた。本業であるライターの肩書を用いて、「取材してもいいですか」「飲みに行きましょう」と言ったところで、まず応じてくれることはない。

 

それにそもそも、賃貸物件の借り手と貸し手の関係である。そうそう密度の濃い人間関係を求める入居者はまずいないだろう。

 

筆者はいつしか、面倒だと思っていたワケありな入居者たちとの触れ合いが楽しく、そして面白いと思うようになっていった。充実した日々の連続だったのだ。

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エクストリーム大家

エクストリーム大家

春川 賢太郎

ライチブックス

【エクストリーム大家】とは元受刑囚や生活保護受給者、元ヤクザや自己破産者、DV避難者などワケありな人たちに部屋を貸す大家のこと。 本業フリーライターの著者が亡き母から受け継いだのは築古の昭和団地&ボロ戸建てと、…

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