綺麗ごとしか言わない検察庁のお役人とのバトル
元受刑者や生活保護受給者、DV避難者など「ワケあり」入居者を専門とする賃貸経営を行う「エクストリーム大家業」はいま、ゆるやかに行政の下請けとして便利使いされ始めている。
今後、この傾向はますます進むのではないか。
2022年、神戸市内にて、とあるNPO主催のセミナーが開かれた。ゲストスピーカーは検察庁のお役人である。登壇した彼らの言い分は概ねこうだ。
「再犯防止のため、住居確保といった社会復帰支援を検察庁として行っている」
この検察庁のお役人曰く、在野の居住支援法人と連携し、検察庁として全面的にこの分野に力を入れていくという。
そもそも法務省のなかでも検察庁がこの居住支援に注力するのには理由がある。取り調べ後、不起訴や起訴猶予となった者がいたとしよう。
もちろん不起訴、起訴猶予とはいえ、何らかの犯罪の嫌疑がかかった人物である。そうした人物に「住む家がない」となると、また何らかの犯罪に関わるかもしれない。それでは社会の治安が不安定になる。だから居住支援の活動に乗り出してきたというわけだ。
この検察庁の居住支援活動は、居住支援法人の法人格を持たない筆者のようなエクストリーム大家とも関係を持つため、あちこちのNPOのセミナーに検察事務官や検察庁採用の社会福祉士がゲストとして登壇し、必死になって活動内容をアピールしている。
「是非とも、皆さんのお仲間に入れて頂きたく―」
まるで選挙運動にやってきた政治家が第一声を発するように芝居がかった口調で検察事務官という肩書を持つお役人が話す。
そして、いかに検察庁が社会の治安を守るために活動しているかの解説に始まり、居住支援の分野で何を大家にしてほしいのか、事細かく語るのだ。
もっとも、その言い分は筆者からすれば地に足のつかない行政に都合がいいものばかりだった。
曰く、「家賃は生活保護受給費の家賃扶助内で収めろ」「耐震基準に不安のある築年数の古い住居はよろしくない」「急な入退去にも対応しろ」「入居者である出所者が地域に溶け込める機会を大家の責任で作ってあげろ」「入居者の就職、就業状況についても把握、就職先とも連携しておけ」「日頃から大家も国家と治安維持のため入居者の見守りをしろ」……などなど。
居住支援法人格を持つNPOならいざ知らず、筆者のような大家が聞くと、およそ商売とはかけ離れた理想論ばかりだ。否、営利を第一義とはしないNPOでも、受け入れられない要求だろう。
正直、いささか辟易とした。話す内容がいちいち癇に障った筆者は、思わず登壇したお役人に噛みついた。