(※写真はイメージです/PIXTA)

元受刑囚や生活保護受給者、元ヤクザや自己破産者、DV避難者など「ワケあり」な人たちに部屋を貸す大家のことを、ライター兼フリージャーナリストの春川賢太郎氏は「エクストリーム大家」と呼んでいます。本稿では春川氏の著書『エクストリーム大家』から一部を抜粋し、「無風」の入居者と過ごした日々は「実につまらなかった」と回顧する著者が、刺激的で「キャラの濃い」入居者と出会うための方法を解説します。

もっともキャラの濃い入居者と出会える町の掲示板

とはいえ町内の掲示板を見て連絡をしてくる人のキャラの濃さ、あくの強さには圧倒されたものだ。それはNPOやネット経由の比ではない。まず、開口一番こう言う。

 

「あんたか? 家貸してる大家ゆうのんは?」

 

筆者「はい。ええと、もしかして掲示板を見て電話くれたん?」

 

「見いへんかったら電話でけんやろ、ボケ!」

 

こんな具合である。さらに詳しい話を聞くと、だいたいが「刑務所帰り」と言う。

 

筆者「どこで(懲役を)務めていたん?」

 

「どこて、お前、ムショやがな。お前ごときに言うてもわからんど。アホンダラ!」

 

筆者「ああ、ごめんしてや。堪忍やで。それでなんでうちに入りたいん?」

 

「おおっ、(生活)保護とかも面倒見たらんかい!」

 

大抵は、酒を飲んで、ちょっと気が大きくなって電話してきたのかなという印象だ。だから会話が噛み合わない。また、その話の多くはハッタリか騙りとみていいだろう。だが、実際に会ってみると、案外、繊細というか気が小さいところがある人が多いものだ。

 

あくまでも筆者の経験則のみに基づいた話で恐縮だが、自ら「ムショ帰り」と声高に言う人の多くは、実は刑務所に行ったことのない人、もしくは行ったとしても、意図的に窃盗などの犯罪を犯し、刑務所に入ることで雨露凌げる場所を確保したい“懲役太郎”であることがほとんどである。

 

本当の出所者は、まず自分から言わない。行政やNPOなど、紹介者の口から、「どこそこ刑務所に何年、傷害で収監されて出所、これから真面目に……」と言われてわかることがほとんどだ。

 

なので、電話口で「ムショ帰り」を連呼されても、正直、「また始まった」という感覚でしかない。

 

町内の掲示板を利用した入居の問い合わせでは、こうした人たちもまた数多い。

 

「俺な、昔、神戸の(生活)保護で迷惑かけとるさかいな。そこわからんようになんとかせいや!」

 

要するに生活保護受給中、何らかの事情で行方をくらまし、そのままあちこち転々としていて、また神戸に舞い戻ってきたのだろう。

 

筆者がこの手の問い合わせをしてきた人たちから聞いた話を総合すると実情はこうだ。カネ、オンナ、そして組織というかヤクザ関連の諸々のトラブルに巻き込まれた、もしくは自分で勝手に巻き込まれたと思っている……そして逃げた。逃げた土地でもまた同じようなことをして、結局、ここ神戸にまた来てしまった――。

 

「大家さん、助けてや! ワシ、この辺歩いとったらエンコ詰めなあかんねん――」

 

一度、筆者の物件の掲示板を見たという70代の年配の男性から問い合わせの電話を頂いたことがあった。たまたま電話をもらったタイミングで筆者も時間が空いていたので急ぎ会いに行き、話を聞いた。

次ページ自称・元ヤクザが「大家」に会いたがったワケ
エクストリーム大家

エクストリーム大家

春川 賢太郎

ライチブックス

【エクストリーム大家】とは元受刑囚や生活保護受給者、元ヤクザや自己破産者、DV避難者などワケありな人たちに部屋を貸す大家のこと。 本業フリーライターの著者が亡き母から受け継いだのは築古の昭和団地&ボロ戸建てと、…

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