(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2023年8月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

1.概観

【株式】

8月の主要国の株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの観測から米長期金利が上昇したことや、中国不動産大手の破綻申請を受けて中国経済への不安が高まったことから下落しました。米国株式市場は、米長期金利上昇を受けて、月中旬にかけて軟調な展開となりましたが、月下旬に開催された「ジャクソンホール会議」後はFRBの追加利上げへの警戒が和らぎ、下げ幅を縮めました。欧州の株式市場は、ユーロ圏の景気減速懸念から下落しました。日本の株式市場は、中国経済への不安などから月中旬にかけ下落したものの、月末にかけて値を戻し、日経平均株価は小幅安となりました。中国株式市場は、中国不動産市場の低迷による信用不安などを嫌気して、上海総合指数、香港ハンセン指数ともに大きく下落しました。

 

【債券】

米国の10年国債利回り(長期金利)は、FRBによる金融引き締めが長期化するとの観測や米国債の需給悪化懸念から一時4.3%台まで上昇しました。しかし、月下旬の「ジャクソンホール会議」で、パウエル議長が従来のデータ重視の考えを強調したことを受けて低下に転じ、上昇幅を大きく縮めました。ドイツの長期金利は、ユーロ圏の景況感の悪化を受けて、小幅に低下しました。日本の長期金利は、米長期金利に連動して上昇しました。

 

【為替】

円の対米ドルレートは、日米の金利差拡大や金融政策の方向性の違いが改めて意識され、円売り・ドル買いが強まったことから下落しました。

 

【商品】

原油価格は、主要産油国の減産や、米利上げ観測が月末にかけて後退し、世界で原油需要が増加するとの期待が高まったことなどから上昇しました。

 

8月の市場動向

 

次ページ2.景気動向

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