(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の暮らしが始まってからも、子や孫を経済的に支える家庭は少なくありません。入学祝い、習い事、家電の買い替え、住宅費の一部など、「一度だけ」「少しだけ」のつもりで始まる支援もあります。しかし、年金生活では日々の生活費に加え、医療費や住まいの修繕費なども重なります。援助が習慣化すると、十分に見えた老後資金が想像以上の速さで減っていくことがあります。

「孫のためなら」…月1万円のつもりが、どんどん膨らむ援助

浩一さん(仮名・68歳)と妻の恵美子さん(仮名・66歳)は、夫婦で年金月26万円ほどを受け取っています。

 

持ち家の住宅ローンは完済済み。退職金の一部と現役時代からの貯蓄を合わせ、預貯金は約3,000万円ありました。

 

「ぜいたくをしなければ、十分やっていけると思っていました」

 

夫婦の楽しみは、近所に住む長男夫婦の子ども、つまり孫に会うことでした。小学校に上がった孫がランドセルを背負って遊びに来ると、恵美子さんはいつも財布から千円札を数枚取り出しました。

 

「これで好きなお菓子でも買いなさい」

 

最初は、月に数千円程度でした。誕生日や入学祝いには少し多めに渡すこともありましたが、夫婦にとっては大きな負担ではありませんでした。

 

ところが、ある日、長男の妻から相談を受けます。

 

「スイミングと英語を習わせたいんです。でも、月謝が少しきつくて」

 

恵美子さんは、迷わず言いました。

 

「孫のためなら、少し出すわよ」

 

習い事代として、月1万円を援助するようになりました。その後、塾代が加わり、教材費や合宿費も頼まれるようになります。

 

長男夫婦は共働きでしたが、住宅ローン、車のローン、保育料、物価上昇で家計に余裕がないと言いました。

 

「今月だけ助けてほしい」

「ボーナスが出たら返すから」

「子どものためだから」

 

そう言われるたびに、浩一さん夫婦は断れませんでした。

 

やがて援助は、孫の教育費だけではなくなりました。家電が壊れた、車検代が足りない、住宅ローンの引き落としが厳しい。気づけば、毎月5万円から8万円を長男世帯に渡すようになっていました。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円で、平均では毎月約4.2万円の不足となっています。浩一さん夫婦は年金月26万円があり、平均的な高齢夫婦世帯と比べて極端に苦しいわけではありませんでした。

 

しかし、自分たちの生活費に加えて、息子世帯へ毎月数万円を渡せば話は別です。

 

「貯金が3,000万円あるから、少しくらい大丈夫だと思っていました。でも、毎月出ていくとなると、減り方が全然違うんです」

 

恵美子さんが通帳を見て不安を覚えたのは、援助を始めて3年ほど経ったころでした。

 

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