健闘する日本企業
日中両国にとって2022年は日中国交正常化50周年を記念する節目の年でした。中国の習近平国家主席と日本の岸田文雄首相が祝電を交換し、「両国の関係発展を重視し、新時代が求める関係の構築に注力する」と述べています。
前著『チャイナテック─中国デジタル革命の衝撃』では、最終章「中国企業の国外進出と日中新時代」を中心に、日中経済関係の変遷や日本を目指す中国企業、互いの違いを活かす日中企業連携の事例を取り上げています。
そこでは中国社会や経済の構造的変化、政治の影響を受けながらも、日本にとって中国ビジネスの重要性が簡単に失われることはないと説明しました。実際、以前から中国に進出している日本企業も、新規参入を試みている日本企業も、中国市場での存在感を高めようとしており、小売関連では出店拡大の動きが止まりません。
近年の「独身の日」キャンペーンにおけるTモールの洋服売上高ランキングでは、男女ともユニクロがトップの座を守っており、実店舗だけでなく、オンライン販売にも力を入れています。また、現在約900の店舗を抱えるユニクロは3000店舗の目標に向けて出店を加速し、とりわけ、「下沈市場※」への出店を拡大しています。
イケア後退をチャンスに進出する「ニトリ」
スウェーデンの家具量販大手イケアの中国ビジネスが後退している中、中国で既に57店舗を擁するニトリは、2022年11月に念願の北京初出店を果たしました。有力な内陸都市である成都、長沙、重慶にも積極的にも出店し、中国全体では2023年中に100店を目指しています。
最注力地域と位置付け、成長する「明治」
大手食品メーカーの明治は2020年7月に1級都市の広州で新会社を設立し、同市で蘇州、天津に次ぐ3つ目の工場建設に着手しました。海外市場の中で特に中国を最注力地域と位置づけて、中国人の購買力と健康意識の向上をさらなる成長の機会と捉えています。
中国市場を投資強化と研究の拠点にする「資生堂」
1981年に初の外資系化粧品ブランドとして中国進出を果たした資生堂は、現地生産と中国市場向けのブランドを確立しています。2022年は資生堂設立150周年であり、その記念イベントにおいて、魚谷雅彦CEOは「中国市場は資生堂の2023年の業績回復のカギであるだけでなく、今後の資生堂グループの成長をけん引する重要なエンジンでもある」と述べています。
また、資生堂中国法人の藤原憲太郎CEOは中国市場の可能性を最大限に引き出す意気込みで「中国市場を従来のビジネスの場から投資強化と研究の拠点にする」と表明しているのです。
2020年から順調な展開を見せる「蔦屋書店」
蔦屋書店は2020年秋に杭州市に1号店をオープンし、書籍や文具雑貨の販売、書籍とカフェが融合した居心地の良い空間の提供、日本文化の紹介など、豊かなライフスタイルを提案し、人気を博しています(写真)。杭州に次ぎ、上海や西安、成都などにも出店し、順調な展開を見せています。
445億円を投じEV市場の拡大を狙う「村田製作所」
製造業では、村田製作所が2022年に発表した、中国における製造拠点の拡大は本当にビッグニュースでした。中国におけるEV市場のさらなる拡大に対応できるよう、生産能力の強化のために過去最大規模の約445億円を投じるということです。
中国日本商会が2022年夏に公開した「中国経済と日本企業2022年白書」によると、日系企業は新型コロナウイルスの感染拡大で中国事業の拡大に慎重な姿勢をとっているものの、対中投資の縮小や中国撤退を検討している企業は数%にとどまっていると言います。
また、日本貿易振興機構(ジェトロ)が実施した「2021年度海外進出日系企業実態調査(中国編)」では、中国に進出している日系企業の2021年の業績について、「黒字企業の割合は中国全体で72.2%と、非製造業を調査対象に含めた2007年度以降の調査としては過去最高の水準」という結果が出ています。
趙 瑋琳
株式会社伊藤忠総研 産業調査センター
主任研究員
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