内需拡大を取り込もうとする欧州企業
2003年以降の対中直接投資実行額を業界別に見ると、製造業への投資は2011年に521億ドルでピークに達しました。その後は縮小傾向が続き、2021年に337億ドルまで減少しています。とりわけ、アパレル関連の減少が目立ち、2005年の49.2億ドルをピークに、2019年には4.3億ドルまで下落しています。
一方では、製造業の投資減少と対照的に、卸売・小売業への投資は増え続けており、2003年に11.2億ドルだったのが、2021年には167.2億ドルまで膨らんでいます。これは「世界の市場」としての可能性を見据えた投資増加と説明できます。
実際、近年、中国市場※の魅力が再認識され、撤退するどころか、中国の内需拡大を取り込むための投資を行う外資系企業が増えています。中でも特に積極的な攻勢を仕掛けているのが欧米企業です。
中国EU商会、うち7割の企業「中国が今後も重要な投資先として上位3位に入る」
1800社以上の会員企業を抱える中国EU商会は、2004年から毎年、在中欧州企業の業績や課題などに関する「ビジネスコンフィデンスサーベイ」を実施しています。最新の2022年版によると、3分の2の企業は2021年の売上高が増加しており、6割の企業は「中国ビジネスが難しくなった」と回答しています。中国事業を拡大すると回答する企業の割合は2021年の調査結果の59%より高く、62%でした。約7割の企業は中国が今後も重要な投資先として上位3位に入るとの認識を示しています。
実際の取り組みとしては、新型コロナウイルス感染拡大をめぐる政策やウクライナ情勢、米中関係など地政学的リスクの高まりを受け、欧州企業は中国ビジネスの現地化を加速させようとしています。サプライチェーンの現地化を計画している企業の数は、サプライチェーンの移転を考える企業の8倍になっていると言います。
こうした中、欧州航空機メーカー大手のエアバスは2022年6月に新1級都市の蘇州に研究開発部門を設置しました。同7月、中国の三大航空会社である南方航空、中国国際航空と東方航空は、エアバス社から292台の飛行機を購入しています。
世界最大の総合化学メーカーであるドイツのBASF社は100億ユーロをかけ、3級都市の広東省湛江市に世界3番目の規模となる化学品生産拠点を建設しています。同社は「世界の化学工業分野で市場シェア40%を占める中国のさらなる成長を見込んでいるため」と明言し、中国市場における自動車や電子製品などの需要増もビジネス拡大のチャンスと捉えています。
また、言うまでもありませんが、ドイツの自動車メーカーにとって中国市場はかけがえのない存在です。中国人消費者の嗜好が変化し、中国のEV新興勢力が台頭していますが、ドイツの自動車メーカーはこぞって中国事業への投資を強化しています。
在中ドイツ商工会議所会頭のクラース・ノイマン氏は2022年末に「色々な課題がありますが、多くのドイツ企業にとって、中国の市場規模や成長は魅力的」と指摘しています。これは中国市場に対する多くの欧州企業の見方だと言えます。
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