スターバックスに挑むコーヒーブランド
茶文化が根付いている中国ですが、近年、コーヒー文化を受け入れ、コーヒーを楽しむ消費者が増えています。そのため、コーヒー関連市場が拡大し、コーヒービジネスは成長性の高い消費分野となっています。
1999年に北京で一号店を構えたスターバックスは、コーヒーとともに「第三の場所(サードプレース)」を提唱し、新たな消費体験とライフスタイルの提供で高級イメージを作り出し、不動の地位を得ています。2018年にはアリババと連携し、オンライン注文と配達にも力を入れています。
そんな中近年は、米国のブルーボトルコーヒーやカナダのティム・ホートンズなどほかの外資系カフェチェーンも、中国におけるコーヒー市場のさらなる拡大を見据えて、こぞって中国へ進出してきています。
一方、スターバックスをはじめとする外資系ブランドに挑む中国コーヒーブランドのトップは、コーヒーチェーンの「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー/Luckin Coffee)」です。
2017年秋に創業した当時は、オンラインのサービスのみで、デリバリーによる場所を問わない消費体験の提供とクーポンプロモーション活動を通じて、利用者の拡大に成功しました。2018年からはリアル店舗の出店を加速させ、破竹の勢いでスケールアップしています。
リアル店舗は洗練された空間で、コーヒー以外に中国で人気の高いフルーツティーやミルクティーなども提供しています(写真)。
店内の注文はすべて専用アプリあるいはSNSアプリ・ウィーチャットのミニプログラムで受け付けており、来店前の注文を促して、販売効率を高めようとしています。実際、大都市では、地下鉄から降りる前に注文し、店内でテイクアウトしてオフィスに向かう消費者が多くなっています。このようにデジタルとリアルの融合で実現した新たな体験と高い利便性こそ、成功のカギとなっています。
ラッキンコーヒーはその高い成長性が市場から評価され、創業からわずか2年で米国ナスダック市場に上場を果たしました。ところが2020年4月初め、同社に、売上高と経費の水増しによる、約320億円の不正会計が発覚。これにより市場と関係者に衝撃を与えただけでなく、上場廃止に追い込まれています。
しかし、不祥事で経営に大きなダメージを受けてから新経営陣の下で再建を進め、現在は回復軌道に乗りつつあります。そして2022年6月末時点の店舗数は7195で、スターバックス(5761店)を大幅に超えています。ラッキンコーヒーは再び、スターバックスに対抗する存在となっています。
ラッキンコーヒー以外にも…次々に新ブランドが誕生しているコーヒー関連ビジネス
ラッキンコーヒー以外にも新興チェーンやインスタントコーヒーを手掛けるブランドが増えています。
2015年に上海で設立された「Manner Coffee」は上海をはじめ、北京や深圳、杭州、成都、武漢など主要都市を中心に店舗を構え、「精品珈琲(スペシャルティコーヒー)」を展開しています。
「三頓半(サンドンバン/SATURNBIRD)」はインスタントコーヒーのネット販売からスタートし、知名度を上げてから実店舗を展開した、人気の高いブランドです。
コーヒービジネスに参入する茶飲料ブランドもあります。蜜雪氷城(激安ティードリンクチェーン)がその一例ですが、ここでは湖南省長沙市に根差した発展から全国的な有名ブランドへ成長した「茶顔悦色(チャヤェンユェセィ/Modern China Tea Shop)」を紹介します。
独特な中国風の店舗設計、巧みなSNS運営およびリーズナブルな価格は高い人気の源泉です。2022年夏に同社は新たな試みとして、長沙市の商業エリアに5店のコーヒーショップを同時にオープンしました。中国風の外装と内装や、中国風の名前の商品、「ラテのうえに唐辛子」というようなインスタ映えも良い目玉商品、多くの消費者が手を出しやすい価格(14元〜20元)の設定など、茶顔悦色と同様に中国風を売りにする運営手法をとっています。
このように次々と新しいブランドが誕生しているコーヒー関連のビジネスは今後も成長が続くことが予想され、外資、内資ともに中国のコーヒー市場をめぐる競争はますます激しくなっていくでしょう。
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