一人っ子政策緩和も出生数は伸び悩み…少子化対策が喫緊の課題
内閣府が公開した日本の2021年の婚姻数は約50万組と過去最低を更新し、ピークの1970年代から半減したと言います。さらに「20代の独身男性の約4割がデート経験なし」というデータもあり、若い人に「恋愛離れ」や「結婚離れ」が起きている現状が見て取れます。
中国でも近年、若者の結婚および出産意欲の低下が見られています。2020年の婚姻件数は800万件強で、2013年の1347万件をピークに減少し続けています(図表1)。
出産についても、「一人っ子」政策が緩和された2016年以降も出生数は伸び悩んでいる状況です。2022年3月に北京で行われた全国人民代表大会(全人代)では、少子化対策がホットトピックとなり、3人目の保育料無料や大学入学試験の点数加算など、多くの提案がありました。かつては出産制限をかけるのに懸命で、筆者自身も一人っ子として生まれたことを思うと、政策は時代に応じて常に変化するものとはいえ、隔世の感を禁じ得ません。
若者が結婚・出産に消極的な2つの理由
なぜ、結婚・出産に消極的な若者が増えたのでしょうか。その主な要因として、まず、発展に伴う格差問題の未解決を挙げたいと思います。
中国人にとって、大きな3つの山を意味する「三座大山」は、かつて中国の民衆を苦しめた封建主義、帝国主義、官僚資本主義の3つを指す言葉として知られていました。それが、今世紀に入り、新たな意味を示す言葉に変わりました。
新「三座大山」はライフステージにかかわる分野、すなわち教育、医療、不動産を意味しています。現在の中国社会では、教育格差や医療リソースの不足、不動産の高騰という新「三座大山」が、社会への不満をもたらし、とりわけ若い人たちの結婚および出産意欲の低下にもつながっていると指摘されています。
ここ数年、格差問題にメスを入れ、国民の満足度や幸福感を高める措置として、中国政府は新「三座大山」を改革しようと、不動産や教育など関連分野の規制を強め始めました。しかし、規制強化は両刃の剣と言わざるを得ません。特に産業への統制強化は経済への打撃ともなるため、政府は難しいかじ取りを迫られています。
一方では、結婚や出産の意欲低下、いわゆるライフステージに対する考え方の変化は、国民の価値観の多様化とも関係します。要するに、本人の主観的な選択で結婚や子育てより「自我(自己)中心」のライフスタイルを選ぶ若者も増えているのです。その結果、「空巣青年(一人暮らしをする若者)」という言葉が作られ、若者の代名詞の1つとして定着しています。
言うまでもありませんが、こういった考え方や価値観の変化は製品・サービスに対する購買意欲と消費行動にも大きな影響を及ぼしています。「自我中心」の人たちは文字通り、自己意識が非常に高いのが特徴です。自分の外見と内面に磨きをかけ、ただ一度の人生をより楽しむための消費を惜しみません。
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