企業にとって「下沈市場」を開拓する2つの意味
「下沈市場」の爆発的な成長は既に始まっています。企業にとって「下沈市場」の開拓は、2つの意味を持つと考えられます。
1.新たなユーザーの獲得とビジネスチャンスの創出
1つ目は当該地域の住民に商品・サービスを浸透・普及させることで、新たなユーザーを獲得し、新たなビジネスチャンスと収益を生み出すことです。前述したように、大都市では新規ユーザーの獲得は限界を迎えているため、多くのアプリやオンラインサービスのユーザー増加は、そのほとんどが「下沈市場」からとなっています。
2.成長力を引き出し、購買力を高める
2つ目は、「下沈市場」におけるインフラ投資や雇用創出などを通じ、「下沈市場」の消費者、特に農民たちの収入増に貢献し、購買力を高めることです。すなわち当該地域の潜在成長力を引き出し、購買力のさらなる向上との好循環を起こすことができます。これは中国政府が掲げる「共同富裕」(図表2)の一環でもあるため、政策支援を受けやすく、企業のイメージアップにもつながるでしょう。
そのため、プラットフォーマー各社をはじめとする中国企業は、次なる戦略のビジネスターゲットの1つを「下沈市場」に定め、既に布石を打っています。日本企業など外資企業がビジネスチャンスを掴むためには、デジタルの力を活かし、「下沈市場」の消費者層に接近するためのマーケティング戦略を練り直さなければなりません。
ワーク・ライフ・バランスや消費行動、人間関係、情報伝達、ユーザーとのコミュニケーションなど、先に挙げたような「下沈市場」の主な特徴を前提にした市場戦略を練り直し、モノ・サービスの世界観を柔軟に伝えることが求められているのです。
趙 瑋琳
株式会社伊藤忠総研 産業調査センター
主任研究員
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