中国IT企業がこぞって狙う!昼休みは2時間、9時~17時でのんびり働く「9億人の中国人市場」…その特殊な市民性の攻略法は?【伊藤忠総研・主任研究員が解説】

中国IT企業がこぞって狙う!昼休みは2時間、9時~17時でのんびり働く「9億人の中国人市場」…その特殊な市民性の攻略法は?【伊藤忠総研・主任研究員が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

これまでの中国市場の中心地は、上海をはじめとする沿岸部や大都市というイメージがありました。しかし、これから中国マーケットへの進出を考える企業に注目されているのは「下沈市場」と呼ばれる地方都市であるといいます。本記事では、株式会社伊藤忠総研・主任研究員の趙瑋琳氏の著書『2030年中国ビジネスの未来地図』より、中国ビジネスの次なるターゲット「下沈市場」について解説します。

企業にとって「下沈市場」を開拓する2つの意味

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「下沈市場」の爆発的な成長は既に始まっています。企業にとって「下沈市場」の開拓は、2つの意味を持つと考えられます。

 

1.新たなユーザーの獲得とビジネスチャンスの創出

1つ目は当該地域の住民に商品・サービスを浸透・普及させることで、新たなユーザーを獲得し、新たなビジネスチャンスと収益を生み出すことです。前述したように、大都市では新規ユーザーの獲得は限界を迎えているため、多くのアプリやオンラインサービスのユーザー増加は、そのほとんどが「下沈市場」からとなっています。

 

2.成長力を引き出し、購買力を高める

2つ目は、「下沈市場」におけるインフラ投資や雇用創出などを通じ、「下沈市場」の消費者、特に農民たちの収入増に貢献し、購買力を高めることです。すなわち当該地域の潜在成長力を引き出し、購買力のさらなる向上との好循環を起こすことができます。これは中国政府が掲げる「共同富裕」(図表2)の一環でもあるため、政策支援を受けやすく、企業のイメージアップにもつながるでしょう。

 

(注)双減とは宿題の削減と塾の禁止 (出所)中国政府の公開資料を基に作成
[図表2]中国政府が掲げている「共同富裕」の具体的な着目点 (注)双減とは宿題の削減と塾の禁止
(出所)中国政府の公開資料を基に作成

 

そのため、プラットフォーマー各社をはじめとする中国企業は、次なる戦略のビジネスターゲットの1つを「下沈市場」に定め、既に布石を打っています。日本企業など外資企業がビジネスチャンスを掴むためには、デジタルの力を活かし、「下沈市場」の消費者層に接近するためのマーケティング戦略を練り直さなければなりません。

 

ワーク・ライフ・バランスや消費行動、人間関係、情報伝達、ユーザーとのコミュニケーションなど、先に挙げたような「下沈市場」の主な特徴を前提にした市場戦略を練り直し、モノ・サービスの世界観を柔軟に伝えることが求められているのです。

 

 

趙 瑋琳

株式会社伊藤忠総研 産業調査センター

主任研究員

 

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2030年中国ビジネスの未来地図

2030年中国ビジネスの未来地図

趙 瑋琳

東洋経済新報社

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