〈愛する息子たちへ〉寡黙な父からの贈与は非課税枠内だったはずが…税務調査でまさかの「追徴課税1,200万円」!思わず抱いた税務官への殺意【税理士が解説】

〈愛する息子たちへ〉寡黙な父からの贈与は非課税枠内だったはずが…税務調査でまさかの「追徴課税1,200万円」!思わず抱いた税務官への殺意【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

贈与当時は問題なく済んだはずでも、税制度の改正によって非課税枠を超えてしまうケースを度々散見すると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースでしょうか。本記事では、Aさんの事例とともに相続時精算課税制度、暦年課税制度の注意点について解説します。

突然の税務調査、やましいことはなにもなかったはずが…

思ってもいなかった税務調査。特に思い当たることもなかったので、なにもないだろうと税務調査の当日を迎えました。しかし、調査官からは予期せぬ問いかけが。

 

「相続人の方の名義の通帳も確認させてください」

「次男様については、過去の相続時精算課税での贈与があったことはご記憶にございますか」

 

調査官に言われるままにいろいろと書類を整理していると、見たことがない長男と次男名義の通帳が見つかりました。

 

なんと、長男と次男が生まれたときから毎月こつこつと積み立てている預金通帳でした。会社が苦しいときもあったにも関わらず、Aさんは愛する息子たちへのこの積立だけは欠かさず続けていたのでした。その額はなんと長男が2,300万円、次男が1,600万円。遺言書の「預金」とは、この通帳のことも指していたのです。父の気持ちを思い、他人の目もはばからず、兄弟2人は涙を流しました。

 

少し冷静になり、思い返すと…

次男の積立は2006年ごろで止まっていました。ちょうど次男が会社を継ぐ決心をしたタイミングです。次男は、当時を振り返って、ようやく思い出したことがありました。その翌年にAさんの会社の取引先の株式の贈与を受けていたのでした。当時は大口の取引先で株式も保有していた関係性でした。会社を継ぐことになったということで当時の価値で2,400万円の株式の贈与でした。

 

相続時精算課税制度を利用して贈与したので、当時は税金を支払うことなく、贈与が完結していました。当時はこれで終わったと思っていたのといまから14年も前のことだったので当時の申告書の控えもなく、相続のときにはこの件についてまったく思い出すことができない状態でした。

 

しかしこのあと、リーマンショックにより、景気も不安定になり、取引先の事業も大幅に縮小し、いまでは取引がまったくない状態になっていました。

 

ここで整理しておくこととして、相続時精算課税制度は、相続が発生したときは贈与した財産は相続財産に含められるということです。今回、贈与を受けた取引先の株式を相続財産に含める場合、贈与した当時の価値で含めることになります。そのため、財産価値としては2,400万円となります。

 

次男は、この取引先の近況について確認してみることにしました。ここ5年以上は連絡を取ることもないままになっていました。確認してみると、当時からは考えられないほどに事業は縮小しており、価値として1/3の株価になっていました。相続時精算課税での贈与ではなければ……と後悔をしても、リーマンショックも予期せぬことでしたし、いまとなってはどうすることもできません。

 

そして、Aさんがコツコツ積み立ててくれていたこの通帳も、たとえ名義が長男と次男であったとしても本人が存在を知らず、銀行印もAさんの銀行印と同じであったため、名義預金と判断されてしまいました。

税務署から課されたペナルティ

結果、今回の税務調査で追徴課税は約1,200万円にもなってしまいました。税務調査において判明した場合、過少申告加算税などのペナルティが課せられます。兄弟2人は仕事一筋で寡黙な父のことを思い返し、もっといろいろな話をしておけばよかったと思う反面、無慈悲な税務官に殺意を覚えずにはいられませんでした。

 

税務官への殺意は完全に逆恨みですが、当人の気持ちを慮ると理解できなくもありません。家族のことを想う気持ちを、近ければ近い存在であるほどに伝えられないことがよくあると思います。いつでも話せるからこそ、いつか話そうということではなく、いつでも話せる関係だからこそ、いつも話し合えるような関係であることが、相続においてもとても重要なことになります。

 

 

木戸 真智子

税理士事務所エールパートナー

税理士

 

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相続税の税務調査の実態と対処方法

 

 

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