物価高の家計への影響と消費者の要望-やむを得ず値上げを受け入れる素地の形成、企業には監視の目も

物価高の家計への影響と消費者の要望-やむを得ず値上げを受け入れる素地の形成、企業には監視の目も
(写真はイメージです/PIXTA)

ニッセイ基礎研究所の調査によると、このところの物価高により8割の人が「家計に影響がある」と回答しています。本稿ではニッセイ基礎研究所の 久我尚子氏が、物価高が家計にもたらした影響や、事業者や政府・自治体に対して消費者がどのような要望を抱いているのかについて解説します。

2―消費者の事業者への要望

一方、消費者の意識を見ると、仕方なくではあるものの、これまでのデフレマインドから、インフレマインドへと変化の兆しも見え始めている。

 

店舗やメーカーなど事業者への消費者の要望を見ると、そう思うとの回答は、「値上げの際は、従業員の賃金にも還元して欲しい」(68.7%)や「値上げの際は、時期や理由などを十分に説明して欲しい」(68.1%)、「多少の値上げは仕方ないが、商品の量や質は変えないで欲しい」(58.8%)では約6割を占める[図表2]。

 

一方、「商品の品質は多少落ちても良いので、値上げはしないで欲しい」については、そう思わないとの回答(32.3%)がそう思う(28.7%)との回答をやや上回る。

 

 

 

デフレ進行下では、企業努力によって極力値上げをしない姿勢が消費者に支持されてきたが、現在ではコスト増や従業員の賃金への還元などが適切な形で価格転嫁されることは、やむを得ないものとして、ある程度受け入れられる素地が形成されている。

 

さらに、品質を下げてでも値上げをしないことについては、むしろ批判的な消費者も目立つようになっている。

 

これらの背景には、欧米諸国のインフレや原材料費の高騰で苦しむ企業の状況、また、欧米諸国と比べて賃金が上がらない日本の状況から、無理に価格を抑えることは労働者の賃金上昇を抑え、ひいては日本の競争力低下にもつながりかねないという構造的な理解が、日本の消費者に広がってきたことがあるのだろう。

 

また、昨今では社会の持続可能性、サステナビリティに関わる意識も高まる中で、例えば、何らかのイノベーションによる生産性向上などで低価格が実現されるのならともかく、労働者への負担が生じるような無理な企業努力で価格を据え置くような姿勢は消費者に指示されにくい時代へと変化しているのではないか。

 

また、属性別に見ても、いずれも価格転嫁は、やむを得ないものとして、ある程度受け入れる素地ができている上で、属性による違いもあるようだ[図表3]。

 

 

 

高齢層ほど「値上げの際は、従業員の賃金にも還元して欲しい」や「値上げの際は、時期や理由などを十分に説明して欲しい」、「多少の値上げは仕方ないが、商品の量や質は変えないで欲しい」で、そう思うとの回答が多い一方、極力価格据え置きを求める志向については、20歳代や子育て世帯など比較的若い層では値上げより利便性や質の低下を、高齢層では量の減少を許容する傾向が相対的に強くなっている。

 

ただし、いずれも、価格据え置きを求める志向は値上げをある程度許容する志向(「多少の値上げは仕方ないが、商品の量や質は変えないで欲しい」)と比べて弱くなっている。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月8日に公開したレポートを転載したものです。

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