(写真はイメージです/PIXTA)

英中央銀行のイングランド銀行が8月3日、政策金利を0.25ポイントアップの5.25%に引き上げるなどの金融政策方針を公表しました。本稿ではニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、今回の金融政策委員会で発表された金融政策の概要について解説します。

1.結果の概要:14会合連続での利上げを決定

8月2日、英中央銀行のイングランド銀行(BOE:Bank of England)は金融政策委員会(MPC:Monetary Policy Committee)を開催し、3日に金融政策の方針を公表した。概要は以下の通り。

 

【金融政策決定内容】
政策金利を5.25%に引き上げ(0.25%ポイント利上げ、6対2対1で2名は0.50%ポイント引き上げ、1名は据え置きを支持)

【議事要旨等(趣旨)】
GDP成長率見通しは、2023年0.50%、24年0.50%、25年0.25%(将来を下方修正)
・CPI上昇率は、2023年5%、24年2.5%、25年1.5%(10-12月期の前年比、上方修正)
見通しに対するリスクは、5月時点の見通しほどではないが、上方に傾いている

 

2.金融政策の評価:足もとのデータはまちまちで政策決定の意見も割れる

イングランド銀行は今回MPCで0.25%ポイントの利上げを決定した(5.00→5.25%)。前回の0.50%ポイントから利上げ幅を縮小させ、市場予想通りの決定となった。なお、決定に際しては2名が0.50%ポイントの利上げ、1名が据え置きを主張しており、意見が割れている。

 

MPCでは足もとの経済統計をまちまち(mixed)であると評価し、インフレ率が前回会合時の見通しから下振れる一方、賃金上昇率は5月時点の見通しから上振れていることに言及している。

 

会合と同時に公表された金融政策報告書の見通しでは、先々の成長率がやや下方修正、インフレ率はやや上方修正された。

 

前提となる政策金利の経路については、前回6月会合時点と比較すると若干低下しているが、前回の見通し作成時である5月と比較すると大幅に上方修正されている(今回の政策金利の前提は今後3年平均で5.5%をやや下回る水準。前回6月の会合直前にインフレ関連データが予想から大きく上振れたため、市場観測の政策金利が大幅に上昇していた。)

 

最新の見通しにおけるインフレ率は、25年4-6月期以降からインフレ率が2%を割り込むと予想されている。MPCは5月時点の見通しほどではないが、リスクが上方に傾いていると評価しており、このリスクを織り込んだ平均インフレ率で見ると先々でも2%程度で推移すると予想されている。

 

政策金利前提は、ピーク水準で6%をやや上回るとされているので、MPCが指摘するように上振れリスクが顕在化する場合には、前提である0.75%(3回分)の利上げが正当化される計算になるだろう。一方、見通し通りインフレ圧力が低下した場合は、1・2回利上げした後の停止が視野に入ると見られる。

 

MPCは、労働市場のひっ迫感、賃金上昇率、サービスインフレの動向を注視する姿勢を維持しており、今後の金融政策を見極める上では引き続きこれらの統計データに注目が集まるだろう。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月4日に公開したレポートを転載したものです。

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