物価高の家計への影響と消費者の要望-やむを得ず値上げを受け入れる素地の形成、企業には監視の目も

物価高の家計への影響と消費者の要望-やむを得ず値上げを受け入れる素地の形成、企業には監視の目も
(写真はイメージです/PIXTA)

ニッセイ基礎研究所の調査によると、このところの物価高により8割の人が「家計に影響がある」と回答しています。本稿ではニッセイ基礎研究所の 久我尚子氏が、物価高が家計にもたらした影響や、事業者や政府・自治体に対して消費者がどのような要望を抱いているのかについて解説します。

1―物価高の家計への影響

物価高で家計の負担が増している。ニッセイ基礎研究所の調査*1によると、20~74歳のうち家計への影響があるとの回答は約8割を占める。

 

物価上昇を感じた費目について尋ねた結果で最も多いのは「食料」(89.4%)、次いで「電気代・ガス代」(84.8%)、「ガソリン代」(52.2%)と続く[図表1]。また、物価上昇によって支出額が増えた費目で最多は「食料」(75.5%)、次いで僅差で「電気代・ガス代」(74.0%)が7割を超えて続く。

 

一方で物価上昇を感じたものの支出額は変わっていない(支出抑制の工夫をしている)費目や、物価上昇を感じたものの支出額は変わっていない(他より優先度が下がるために支出抑制している)費目については「特にない」・「わからない」との回答が目立ち、どちらも両者を合計すると約8割を占める。

 

 

 

この結果だけを見ると、支出抑制の工夫をしている費目は特にない、ということになるが、消費者の肌感覚からすれば違和感があるだろう。

 

これは、例えば、食費の中でもパン、牛乳といった個別商品について尋ねれば、低価格商品へ乗り換えるなど、支出抑制の工夫が見られるのだろうが、数多くの商品が値上がりしていることで、食費全体としては個別商品で工夫をしても、支出がかさみ抑制できている費目がない、という理解が妥当であると考える。

 

以上より、消費者は、生活必需性の高い費目を中心に値上がりが相次ぐ中で、支出抑制の工夫をするというよりも、値上げをやむを得ず受け入れており、家計負担が増している様子がうかがえる。

 

なお、年代やライフステージ、年収などの属性別に見ても(図表略)、全体と同様、生活必需品を中心に物価上昇を感じ、支出額が増えている一方、支出額が変わらない費目や減らした費目は「特にない」や「わからない」との回答が多い。

 

物価上昇を感じた費目や支出額が増えた費目の特徴を見ると、子育て世帯では生活必需性の高い費目や教育費、娯楽費などの選択割合が高く、他の世帯と比べて多方面から物価上昇を感じている。

 

また、高年収層では生活必需性の高い費目の選択割合が低く、「外食」や「レジャー」、「旅行」、「趣味」など娯楽性の高い費目で高い傾向がある。

 


*1 「第12回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」、調査時期は2023年3月29日~3月31日、調査対象は20~74歳、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答2,558。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月8日に公開したレポートを転載したものです。

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