〈突然の相続発生!〉「一体なにから着手すれば…涙」相続手続きに必要な書類&取得方法一覧【相続専門税理士が解説】

〈突然の相続発生!〉「一体なにから着手すれば…涙」相続手続きに必要な書類&取得方法一覧【相続専門税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

大切な家族が亡くなると、悲しむ間もなくあらゆる手続きが押し寄せてきます。親族への連絡、葬儀、そして何より大変な相続税申告の準備…。しかし、気持ちばかり焦り、どこから手をつけるべきかわからないという方も多いでしょう。ここでは、相続税申告の必要書類についてわかりやすく6つのくくりに分類し、目的と取得方法をまとめます。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「相続税申告に必要な書類、なにを集めたらいいの…!?」

生徒:私の母が他界し、先日、四十九日の法要が終わったばかりです。相続税の申告が必要なのですが、どのような書類を集める必要があるのかサッパリわからず、どうしたらいいのか…。気持ちばかり焦って、もう! なにも進みません!!

 

先生:まあまあ、落ち着いて。そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。相続税の申告に必要な書類ですが、主なものとして、

 

①身分関係

②不動産関係

③預貯金・証券口座関係

④生命保険関係

⑤債務・葬式費用

⑥その他の書類

 

以上の6種類に大別されます。順番に説明しましょう。

 

生徒:そんなにたくさんあるんですね! お願いします。

 

★相続税申告の必要書類についてはこちらをチェック!

【相続税申告完全ガイド】必要書類一覧とその取得方法について税理士が解説!

①身分関係…「相続人の確定」のため、絶対必要

先生:何よりも重要なものは身分関係の書類です。これらは相続人を確定するために絶対に必要で、相続税申告が必要ない場合であっても、遺産分割を行うために必ず入手しなければいけないものです。まず先に取得すべきものは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と附票、住民票の除票です。

 

生徒:どこで入手できるのでしょうか?

 

先生:これらは市区町村役場で取得することができますよ。

 

生徒:これを入手すれば、相続人が誰なのか確定するわけですね。

 

先生:そうです。相続人全員の戸籍謄本と附票、住民票が揃ったら、法務局で「法定相続情報一覧図」を作成してもらえばいいでしょう(『超面倒な「相続人の書類収集」を簡便にする「法定相続情報証明制度」のしくみ』参照)。「法定相続情報一覧図」があれば相続税申告以外の手続きで被相続人の戸籍謄本を提出する必要がなくなるからです。

 

 

生徒:相続が発生する前に「法定相続情報一覧図」を作っておけばよかったです…。

 

先生:それはダメなんですよ。身分関係の書類は、相続開始日10日以降のものでなければ使えません。

 

生徒:そうなんですね!

 

先生:それから、相続人全員の印鑑証明書が必要です。「遺産分割協議書」には相続人全員の実印を押しますが、それに添付するためです。

 

生徒:印鑑証明書は代理人に取得してもらうことができませんから、自分で市区町村役場に行くか、コンビニのコピー機を使って取得する必要がありますね。

②不動産関係…登記簿謄本と公図、固定資産税評価証明書など

生徒:母の自宅不動産はどうしたらいいのでしょうか?

 

先生:不動産関係で必要になるのは、登記簿謄本と公図、もしあれば地積測量図です。これらは法務局で取得しますが、相続登記を依頼する司法書士に依頼すれば取得してもらえます。

 

生徒:相続登記でも必要になりますね。

 

先生:それから、固定資産税評価証明書と名寄帳です。これは市区町村役場や都税事務所で取得することができます。固定資産税評価証明書の記載内容は、自宅に送られてきている固定資産税納税通知書兼課税明細書と同じですから、もし先に概算で相続税の計算する場合は、固定資産税納税通知書兼課税明細書を税理士に渡して計算してもらいましょう。

 

生徒:自宅だけでなく賃貸用のアパートも持っている場合、何か追加で必要になりますか?

 

先生:その場合は、入居者との賃貸借契約書が必要です。賃貸している場合、借家権と借地権に相当する評価額を相続財産から減額することができますから、忘れないようにしてください。

③預貯金・証券口座関係…残高証明は「相続開始日」で依頼

生徒:銀行の預金口座と、証券会社の証券口座もあるのですが…。

 

先生:預貯金・証券口座関係で必要なものは、銀行預金(ゆうちょ銀行であれば貯金)の残高証明書です。定期預金があれば、既経過利息の計算もお願いしておきます。発行を依頼するときは、必ず「相続開始日の残高」で証明してもらってください。よく間違える方がいますが、依頼日の残高証明ではダメです!

 

生徒:亡くなる直前に銀行から引き出しておいた現金が手元に残っている場合はどうなりますか?

 

先生:それは手許現金として申告します。税理士にその金額を伝えたうえで、銀行預金通帳を渡せば大丈夫です。直前引出しした現金や相続開始前7年間の贈与は、相続財産に加算しなければいけませんので、過去7年分の預金通帳を税理士に確認してもらう必要があります。

 

生徒:もし預金通帳を紛失してしまった場合は、どうしたらいいのでしょうか?

 

先生:手数料がかかりますが、銀行に取引明細書の発行を依頼するしかありません。

 

生徒:証券口座についてはどのような書類が必要でしょうか。

 

先生:証券会社も同様に残高証明書を発行してもらいます。配当金の通知書が届いていれば、未収配当金を相続財産に計上するために、それも必要になりますよ。

 

★法定相続情報証明制度についてはこちらをチェック

法定相続情報証明制度とは?相続手続きをスムーズに進める方法

④生命保険関係…死亡保険なら、保険証書+支払通知書

生徒:生命保険契約にはどのような書類が必要でしょうか?

 

先生:死亡保険に関しては、手元にある保険証書と、それに基づいて請求した死亡保険金の支払通知書です。医療保険に加入していた場合は、入院給付金の支払通知書も必要です。

⑤債務・葬式費用…僧侶へのお布施は領収書がなくてもOK

生徒:債務・葬式費用にはどのような書類が必要でしょうか?

 

先生:金融機関からの借入金があれば、その残高証明書が必要です。未払いの費用については、税金や保険料なら納付書、水道光熱費なら請求書や領収書が必要です。あと、医療費や介護費用の金額が大きいと思いますが、これも相続開始後に受け取った請求書や領収書も必要になります。

 

生徒:では、葬儀についてはどうでしょうか?

 

先生:葬儀の費用は、葬式費用、火葬費用とお布施、納骨費用を申告することになるから、これらの請求書や領収書が必要です。

 

生徒:お坊さんに支払ったお布施の領収書は、もらっていないのですが…。

 

先生:お布施は領収書がなくてもかまいません。税理士に金額を伝えるだけで大丈夫ですよ。

その他の必要書類…贈与に係るもの、車や骨董を評価する書類等

生徒:これ以外になにか必要なものはありますか?

 

先生:生前贈与はありませんでしたか?

 

生徒:はい。私を含め、相続人はなにも贈与してもらっていません。

 

先生:それなら大丈夫ですね!

 

生徒:もし贈与がある場合は、どのような書類が必要ですか?

 

先生:生前贈与がある場合は、贈与財産を相続財産に加算することがあるので、贈与契約書や贈与税申告書が必要です。今回のご相談とは関係ありませんが、もし亡くなった方が会社経営者の場合は、非上場株式の評価に必要な資料が必要ですし、個人事業主や賃貸不動産オーナーであれば、準確定申告(『「美容院経営・アパート運営をしていた母が亡くなり…」相続人も混乱しがちな〈準確定申告〉とは?』参照)に必要な資料もそろえる必要があります。

 

生徒:なるほど…。

 

先生:ほかにも細かい相続財産として、自動車、ゴルフ会員権、リゾート会員権、老人ホームに係るお金、貴金属や絵画・骨董品などを評価するための資料も必要ですよ。また、相続税申告の特例や控除に必要となるものとしては、相続人の障害者手帳、相続人が賃貸物件に住んでいた場合には過去3年分の賃貸契約書、過去10年以内の相続税申告書、家族名義になっている財産に係る資料などもあります。

 

生徒:よくわかりました。ありがとうございます。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

★戸籍謄本の入手方法についてはこちらをチェック

【相続】戸籍謄本の種類、記載内容、入手できる場所や費用を徹底解説

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