恐ろしい…「先祖伝来の不動産」の売却準備で、超めんどくさい〈境界確定・測量〉が必要となるケースとは?【相続専門税理士が解説】

恐ろしい…「先祖伝来の不動産」の売却準備で、超めんどくさい〈境界確定・測量〉が必要となるケースとは?【相続専門税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

高齢の親から相続した空き家を売却する場合、敷地の境界確定と測量が必要になるケースがあります。どのような状況で必要となるのか、また、実際の境界確定や測量の進め方についてもみていきましょう。FP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

先祖伝来の土地、土地の境界が確定せず面積が不明確なことも…

生徒:先日、私の母親が他界しました。私が実家不動産を相続したのですが、敷地の面積がわからないのです。どうしたらよいでしょう?

 

先生:まず、土地の登記簿を確認しなければなりません。最近購入された土地なら、面積は正確に登記されているはずです。ですが、築年数が古い建物の敷地や、先祖代々相続されてきた土地の場合、境界が確定されておらず、土地の面積が不正確な場合があります。

 

生徒:なぜ登記簿の面積が不正確なのですか?

 

先生:古い土地、とくに昔から家族で受け継がれてきた土地は、境界がはっきりしていないことがあるのです。境界が不明確では、買い手もどれくらいの面積の土地を買えるのか分からなくなってしまいますから、売買の際に問題が起こる可能性が高いといえます。

 

生徒:それは困りますね!

 

先生:また、都市部での固定資産税や都市計画税は土地の面積によって決まるので、間違った面積の場合、税金が違ってきます。そのため、正確な面積を知ることが大切なのです。

 

生徒:どうすればよいのでしょうか?

 

先生:まず「境界」をはっきりさせて、正しい面積を測るために「測量」をする必要があるでしょう。そうすれば、安心して土地を売却することができます。

 

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「境界確定」や「測量」はなぜ必要なのか?空き家相続後の売却準備をしよう

境界確定測量はどこに依頼先する? 費用の目安は?

生徒:私の場合、どうすればよいでしょうか?

 

先生:まずは現地に行き、「境界標」があるかを確認しましょう。境界標がなければ、土地の境界確定の測量が必要かもしれません。

 

生徒:測量するにはどうすればよいでしょう?

 

先生:測量士や土地家屋調査士に依頼することになりますが、相続の場合は、相続税申告や譲渡所得税申告に影響があるため、税理士とも連携して進める必要があるでしょう。

 

生徒:境界確定の測量は、具体的にはどのように進めることになりますか?

 

先生:まずは仮測量を行い、測量者と土地所有者が集まって、境界確定の話し合いをします。境界が確定すれば確定測量が行われ、正確な面積が分かるので、境界標を設置できるようになるでしょう。

 

生徒:測量にかかる費用はどれくらいですか?

 

先生:一般的に、100m2程度の場合、土地の現況測量は10万~20万円、確定測量は40万~60万円程となるでしょう。ただし、役所との話し合いの立会いが必要な場合や、近隣トラブルで交渉が必要となる場合には費用が増えることもあります。事前に見積もりを取っておくとよいでしょう。

 

生徒:近隣とのトラブルは避けたいですね。

 

先生:測量する際には、隣接所有者との土地境界の話し合いに立ち会うことが必要になります。また、土地家屋調査士が境界確定の測量後に作成した境界確定書には、依頼者が押印しなければいけません。

 

生徒:境界確定の測量を依頼したら、その後どのような手続きが必要ですか?

 

先生:境界確定後、測量図面や境界確定書面が作成され、それらをもとに、土地登記が行われます。

 

生徒:境界確定の測量や登記にかかる期間はどれくらいですか?

 

先生:測量から登記完了までの期間は事案によって異なりますが、おおよそ3カ月程度が目安です。

「境界確定訴訟」になると、時間も費用もかかってしまう

生徒:隣地の所有者と土地境界について話し合いしても合意に至らない場合は、どのような方法で解決できるでしょうか?

 

先生:合意が難しい場合には「境界確定訴訟」と「筆界特定制度」という2つの制度が利用できます。ただし、境界確定訴訟には時間がかかり、訴訟費用も相当にかかりますので、簡単には利用できないかもしれません。

 

生徒:「境界確定訴訟」はどのようなものですか?

 

先生:境界確定訴訟とは、裁判所で土地境界の決着をつけるものです。裁判所は原告と被告の主張にとらわれず、境界を確定してきます。境界の位置について判断できない場合でも、裁判所が判断して境界を決定するのです。

 

生徒:境界確定訴訟には、どれくらいの時間と費用がかかるのでしょうか?

 

先生:境界確定訴訟は裁判なので、判決が出るまでに数年かかることもあるようです。費用についても、土地の鑑定費用、裁判官・書記官の実地検証費用、弁護士費用など、大きな負担となるでしょう。そのため、土地所有者にとっては必ずしも使い勝手のよい制度ではないのです。

 

生徒:それは困りますね…。

 

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【FP3級】不動産取引とは?売買契約と取引条件を学ぶ

「筆界特定制度」を利用するケースが増えているワケ

先生:最近は境界確定訴訟よりも「筆界特定制度」を利用するケースが増えています。

 

生徒:どのような制度でしょうか?

 

先生:筆界特定制度は、裁判所ではなく、法務局が管理している制度です。土地家屋調査士が実地調査を行い、法務局に筆界特定の申請を行うものです。法務局は、調査結果に基づいて土地の筆界を特定するのです。

 

生徒:境界確定訴訟と筆界特定制度の違いはなんですか?

 

先生:境界確定訴訟は裁判所が決定するものなので、訴訟費用が高く、時間がかかります。これに対して、筆界特定制度は法務局が管理する制度で、費用や手続き期間は比較的短くすみます。ただし、筆界特定制度はあくまで登記上の問題を解決するものであって、隣地所有者との紛争解決には必ずしも効果があるわけではないのですが…。

 

生徒:筆界特定制度のほうが使いやすそうですね。

 

先生:そうですね。筆界特定制度は、訴訟よりも早く境界確定ができ、費用も軽減されることがメリットとなっています。通常、申請から特定までの期間は6~9カ月程度で、費用も100万円以下になるのが一般的です。

 

生徒:ただし、筆界特定は法的に確定されたわけではない、ということでしょうか?

 

先生:そうです。筆界特定制度は、あくまで本来あった筆界を明らかにするだけで、行政処分ではなく、また、筆界を形成する力は持ちません。そのため、筆界特定後に境界確定訴訟が提起されると、別の位置に筆界が決まる可能性もあります。

 

生徒:ならば、実際に行う意味があるのでしょうか?

 

生徒:実務上、筆界特定がされたあとに境界確定訴訟が提起されても、筆界特定の結果が考慮されるため、異なる結果になることはほとんどないようです。

 

生徒:それでは、筆界特定制度を利用する際には、どのような手続きが必要なのですか?

 

先生:まず、土地家屋調査士に依頼し、筆界特定の申請書を作成してもらいます。その後、申請書と必要な添付書類を法務局に提出すればよいのです。

 

生徒:境界確定と測量の重要性について理解できました。ありがとうございます。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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