「やっと主人の葬儀が終わりました…」老人ホームに暮らす高齢女性〈相続手続き〉にともなう〈4つの難問〉に衝撃【相続専門税理士が解説】

「やっと主人の葬儀が終わりました…」老人ホームに暮らす高齢女性〈相続手続き〉にともなう〈4つの難問〉に衝撃【相続専門税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

大切な家族が亡くなり、葬儀関係がひと段落しても、多くの方は落ち着くことができません。なぜならそのあとに、10カ月という期限が定められた「相続手続き」が控えているからです。ここでは、相続手続きの全体像について、夫を亡くした高齢女性のケースを例にみていきましょう。FP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

相続発生…必要になる「4つの手続き」とは?

相談者:ようやく主人の葬儀が終わりました…。足腰を痛めて、私の方が先に老人ホームに入っていたのに、主人が先に旅立つなんて、本当につらくて…。

 

税理士:本当に大変でしたね…。

 

相談者:でも、いつまでも泣いてはいられません。気持ちを切り替えて、相続の手続きを始めようと思います。どのような順番で進めていけばよいか、教えていただけませんか。

 

税理士:それでは、相続手続きの全体像をご説明しましょう。大まかに申し上げますと、「相続人の確定」「遺産の分割」「相続税申告」「名義変更手続き」の4つです。

 

➀相続人の確定

②遺産の分割

③相続税申告

④名義変更手続き

 

相談者:いろいろとやるべきことがあり、大変そうですね…!!

 

★相続手続きの全体像についてはこちらをチェック!

【相続手続の全て】岸田康雄税理士事務所による詳細ガイド!期限と手続きを理解しよう

➀相続人の確定…出生から死亡時までの戸籍を遡り、確認

税理士:最初に行うべきことは、誰が遺産を相続することになるか、相続人を確定することです。ご主人は遺言書を書いておられましたか? ご主人の遺言書があれば、そこに名前を書かれている方が、相続することになります。

 

相談者:いいえ。主人は遺言書を書いておりませんでした。

 

税理士:奥様の場合、ご家族は奥様とお子さんお2人ですので、相続人は3人ということになりそうですが、それを確定するために、ご主人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて入手しなければいけません。

 

相談者:出生から死亡時までですか!? 主人は、生まれは北海道ですが、現在の本籍地は東京です。転籍したり、本籍地を変更したりしているようですが、出生まで遡ることになるのでしょうか…?

 

税理士:そうです。入籍と転籍で古い戸籍に遡っていくことができます。複数の市区町村役場に請求することになりますが、ご自身で取得される場合は、下記の手順をご参照ください。また、この手続きは税理士にご依頼いただければ、取得代行ができますのでお任せください。

 

故人の戸籍謄本取得の手順

 

① ご自身が法定相続人であることを示す戸籍謄本の取得

 

② 亡くなられた方の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本)を取る

 

③ ②で取得した戸籍謄本に出生からの情報が無ければ、遡って別の市町村へ取りに行く(郵送可)

 

④ 平成15年1月11日以前のものは改製原戸籍謄本・除籍謄本を取る

 

※ 戸籍謄本は近年個人情報保護法の観点から、請求できる方が限られています。相続人であっても法定相続人だということを証明できるご自身の戸籍謄本も必要になります。

 

相談者:自分で取得するのは大変ですね! ぜひ先生にお願いします。

②遺産の分割、③相続税申告…遺産分割協議書の準備を

税理士:その次に必要なのは、相続財産を把握することです。現時点では正確に金額を評価する必要はありません。相続放棄と相続税申告の必要性を判断するだけですから、ひとまずは大まかに把握できていれば大丈夫です。相続財産にはどのようなものがありました?

 

相談者:東京都荒川区の一軒家の自宅、銀行預金、証券口座だと思います、あと、生命保険がありました。

 

税理士:相続の際にはプラスの財産だけではなくマイナスの財産として、借金も相続することになります。借金は大きい場合は3ヵ月以内に相続放棄しなければいけません。お借入れはありませんでしたか?

 

相談者:いいえ。借金はありません。

 

税理士:お預かりした固定資産税の課税明細書によれば、ご自宅の不動産の相続税評価額はだいたい3,000万円くらいになりそうです。それ以外の相続財産はどれくらいの金額でしょうか?

 

相談者:銀行預金が2,000万円、証券口座で1,000万円くらいだったと思います。生命保険は500万円です。

 

税理士:承知しました。そうなると、相続財産は合計して6,500万円くらいですね。基礎控除の4,800万円を超えているので、相続税申告が必要になりそうです。

 

相談者:わかりました。先生に申告をお願いできますか。

 

税理士:承知しました。その次に必要となるのが、遺産分割協議です。これは、相続人全員で遺産の分け方を話し合って、その内容を書面にまとめることです。分け方は決めてありありますか?

 

相談者:そうですね、私はいま老人ホームに入っているのですが、自宅だけは私が持っておこうかと思っています。銀行預金は長男に、証券口座は長女に分けようと思います。生命保険の受取人は私になっています。

 

税理士:承知しました。それでは、話し合いが決まりましたら、こちらで遺産分割協議書を作成しますので、そこにご署名と実印の押印をお願いします。その際には、印鑑証明書をご用意いただくことになりますので、これだけはご自身でご準備ください。

 

相談者:承知しました。

 

★法定相続情報証明制度についてはこちらをチェック

法定相続情報証明制度とは?相続手続きをスムーズに進める方法

④名義変更手続き…司法書士、行政書士に依頼する

相談者:不動産や預金などの名義変更はどうすればよいでしょうか。

 

税理士:預金については、銀行で必要書類を受け取り、分割する方全員が署名押印をして提出します。そうすれば、相続人の皆さまの銀行口座へ分割して振込みがされるため、預金口座は名義変更する必要がありません。証券口座については、相続人が新しい証券口座を開設して、そこに有価証券を移さなければなりません。不動産の名義変更や相続登記は司法書士に依頼します。

 

相談者:これも大変そうですね!

 

税理士:不動産の相続登記は司法書士をご紹介します。また、私は行政書士資格も持っていますから、よろしければ預金口座と証券口座の手続きも代行させていただきますが、いかがでしょうか。

 

相談者:ぜひお願いします!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

★相続時精算課税についてはこちらをチェック

相続時精算課税は相続税の前払い。その仕組みをしっかり理解して有利な手続きをしましょう。

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