(画像はイメージです/PIXTA)

遺産相続の手続きは、亡くなった人や相続する人の戸籍謄本を揃え、手続きのたびに提出するなど大変な手間がかかります。この負担を解消するために創設されたのが「法定相続情報証明制度」です。この制度を利用することで、遺産相続の手続きの負担が軽減されます。具体的に見ていきましょう。法定相続情報証明制度についてFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

法定相続情報証明制度の利用とそのメリット

生徒:母が他界して遺産相続の手続きを行っています。「法定相続情報証明制度」を使うと便利だと聞いたのですが、これはどのような制度でしょうか?

 

先生:これは、法務局に申請することで、亡くなった人と相続人の関係を法務局が証明する仕組みだね。

 

生徒:なるほど。

 

先生:この制度を利用することで相続の手続きを簡単にして、相続登記など遺産相続の手続きをスムーズに進めることができるんだ。不動産の相続登記や銀行預金の解約などの手続きも、効率的に行うことができるようになるよ。

 

生徒:それは便利ですね。

 

★法定相続情報証明制度についてはこちらをチェック

法定相続情報証明制度とは?相続手続きをスムーズに進める方法

法定相続情報証明制度のメリット

先生:法定相続情報証明制度のメリットのひとつは、最初に必要書類を揃えるだけで、その後は戸籍謄本などを何度も提出する必要がない点なんだ。

 

生徒:それはいいですね。

 

先生:複数の相続手続きを同時に進めることができるようになることもメリットだね。これまでは、手続きが1ヵ所で完了するまで原本が返却されず、ほかの場所での手続きができない問題があったんだ。

 

生徒:ぜひ私も活用したいです!

法定相続情報証明制度の手続きの流れ

先生:今回の相続でも使ったほうがいいですよ。法定相続情報証明制度を使うためには、戸籍謄本や除籍謄本などの必要書類を集め、自分で法定相続情報一覧図を作成し、申請書を作って法務局に提出するんだ。申請ができる人は相続人または代理人で、申請できる法務局は、亡くなった人の本籍地など、亡くなった人の最後に住んでいた場所、申出する人の住んでいる場所、亡くなった人の名義の不動産がある住所地のいずれかだね。

 

生徒:手続きが完了すると、どうなるんですか?

 

先生:手続きが完了すると、「法定相続情報一覧図」の写しがもらえるんだ。手数料は無料で、5年間保管されて、保管中はいつでも再交付が可能だよ。

 

生徒:なるほど。それで遺産相続の手続きがスムーズに進むんですね。

法定相続情報証明制度の必要書類

先生:法定相続情報証明制度の手続きに必要な書類について説明しようか。まず、戸籍関係の書類だね。亡くなった人の戸籍謄本、住民票の除票、そして相続人全員の戸籍謄本が必要になる。

 

生徒:そうなんですね。相続発生前に準備しておけばよかったです。

 

先生:いや、戸籍謄本は相続発生日以降に発行されたものでなければいけないんだ。それと、相続人の代表者が法務局へ申し出る場合、氏名と住所を確認できる公的書類が必要だね。例えば、運転免許証やマイナンバーカードのコピーかな。

 

生徒:本人確認書類はコピーでいいんですか?

 

先生:コピーだと、表と裏の両面コピーが必要で、原本との相違がないと記載し、申出人が記名と押印をする必要があるよ。また、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人の場合だと、親の戸籍謄本も必要になるんだ。それから、法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載しようとする場合、各相続人の住民票も出さなければいけないね。

 

生徒:代理人が申出る場合はどうですか?

 

先生:代理人が申出る場合、委任状が必要なのはわかると思うけれど、親族関係を証明する書類が必要になることもあるね。弁護士や税理士であれば、資格者証明書も必要になるね。

 

生徒:それで、法定相続情報一覧図を作成するんですね。

 

★遺産分割協議書の書き方はこちらをチェック

【これを見れば丸分かり】相続が発生した際の遺産分割協議書の書き方、作成方法とは?

法定相続情報一覧図の書き方

先生:法定相続情報一覧図は、相続人の状況によって書き方が異なるんだ。例えば、相続人が配偶者と子どもである場合、亡くなった人の氏名や最後の住所を記載するよね。相続人の住所の記載は任意だけれど、記載する場合は住民票の内容と同じように書くんだ。申出人となった相続人には、カッコ書きで「申出人」と記載することが必要だね。最後に、作成日や作成者の住所と氏名を記載することになるよ。

 

出所:法務省
[図表]法定相続情報一覧図の記入例 出所:法務省

 

生徒:たくさん書くことがあるんですね! それを自ら作成して、必要書類を揃えて提出すれば完了ですね。

 

先生:そうだね。ここでの手続きは大変かもしれないけれど、一度作っておけば、その後の遺産相続の手続きをスムーズに進めることができるよ。相続人の負担が軽減されて、効率的に手続きが行えるようになるんだ。

 

生徒:先生、法定相続情報証明制度について理解できました。ありがとうございます。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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