今回は、企業の「持ち合い株主」が消えつつある理由を見ていきます。※本連載は、コンサルタントとして活躍する出口知史氏の著書、『東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、企業の経営戦略に潜む落とし穴を見ていきます。

安定経営に寄与する一方、馴れ合いを生んだ「持ち合い」

かつては最前線の銀行員には「最後は、担当者か責任者が、経営者の顔つき・人格や覚悟を見て、お金を貸せるか責任をもって判断する」というロマン(?)があったようですが、いまはそうした俗人的な判断を入れる余地が少なくなってきました。

 

筆者の知人が20年以上前に大手銀行に勤めていた新人の頃、新規融資を獲得すべくある娯楽産業の会社と話をまとめ、銀行内で稟議を上げた時のことです。上司はその稟議書を片手に、

 

「お前は将来、自分の子供ができた時、こうした場に出入りさせたいと思うのか? 何でもいいから、社会的な視野から自分なりのポリシーを持て」

 

と言って、条件的には申し分ないのにもかかわらず却下されたそうです。いわゆる反社会的勢力等とはまったく関係のない会社でしたが、良くも悪くもそうした感情的な判断があったということを懐かしそうに語っていました。

 

以前は企業に対するお金の出し手は、銀行からの融資と、銀行もしくは「持ち合い株主」による出資金(株のことです)が中心でした。

 

持ち合いとは、取引関係があったりする親密な間柄の企業同士で株を持ち合うことです。事業の事情を深く知らない“部外者”が株主として経営に介入することを防ぎ、自分たちで長期的視点に立った経営ができるというメリットがある一方で、幹部同士の馴れ合いを生んだり、経営者が暴走した際に制御されにくくなったりするデメリットがあります。

 

しかし、結果良ければすべて良しというもので、高度経済成長期やバブル期においては、そのデメリットについて指摘されることはほとんどありませんでした。

主要株主が「外国人投資家」に変化した結果・・・

ところが、景気・経済情勢の悪化により、銀行からの融資が出にくくなっていきました。銀行や事業会社による持ち合い株式も、「そこに使って動かせないお金を、本業の立て直しや成長に使うべきだ」というプレッシャーがかかってきたこともあり、解消・売却が進みました。

 

大和総合研究所の調査によると、上場企業による株式の持ち合い比率(株式数ベース)は1991年度で27.8%でしたが、2009年度には6.5%になっています。同様に、株式を企業が保有していた比率は1991年度で41.8%でしたが、2009年度には15.7%と、大きく減少しています。

 

銀行は金融業に集中し、事業会社は事業に集中するために持っている株式を現金化し、財務状態を良くしたり、事業の立て直しや設備投資や研究開発に振り向けたりするような動きをしたと推測されます。

 

こうして手放された株は、主に外国法人投資家に買われるようになりました。その保有比率は90年代前半では5~10%程度でしたが、2015年時点では35%を超えるまでに存在感が大きくなってきています。外国人投資家は、経営者は合理的に最善を尽くして利益を出し、株主に還元するべきだという意識が強いため、明確に意見を伝えたりします。

 

資金の出し手が変化することで、上場企業にとっては自分たちと異なる意見を持っていようとも、株主を無視できなくなってきました。

東大生が実際に学んでいる 戦略思考の授業

東大生が実際に学んでいる 戦略思考の授業

出口 知史

徳間書店

現役東大生を対象に著者が行っている経営戦略の講義が待望の書籍化。 今年で9年連続となる人気講義には、経営者が判断を誤る背景、成果主義の弊害、新興国進出の損得、アウトソース依存による空洞化危機、危ない経営の見抜き…

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