今回は、大企業が莫大な報酬を払って「コンサルティング会社」を使う理由を見ていきます。※本連載は、コンサルタントとして活躍する出口知史氏の著書、『東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、企業の経営戦略に潜む落とし穴を見ていきます。

かつてはお互いが協力して事業に取り組んでいたが…

大企業特有の現象ですが、有名コンサルティング会社が計画作成などのプロジェクトに関与しているケースがあります。著者だけの感覚かもしれませんが、コンサルティング会社の使い方が、10年くらい前から大きく変わってきたように思えます。

 

それ以前は、大きな費用をかけるのだから多少なりとも社運を懸けるようなプロジェクトを立ち上げ、市場や自社データを改めて社内とコンサルティング会社とで徹底分析し、見えてきた課題に真剣勝負を挑んでいました。絵を描くことと結果を追求するフェーズに合わせて取り組んでいたのです。

真の目的は「コンサル会社」への責任の押し付け!?

ところがこの10年くらいの傾向として、この2つのフェーズは別物となり、また、大企業が有名コンサルティング会社を、中小企業は中規模以下もしくは個人で活動するコンサルタントを雇うようになりました。当然、報酬は前者のほうが1桁も2桁も上です。

 

一見すると、絵を描くだけのために数千万~億単位円の報酬を払ってコンサルティング会社を使うことにどれほどの意味があるのかと思われますが、そこには内部の人間にとっての大事な意味があります。

 

何か大きなことに取り組まなければならない時に、社内で提案する側にとっても、それを受けて社内で決裁する側にとっても、責任を回避できることです。将来的に何か不都合な事態が起こっても、その時点ではすでにいないコンサルティング会社のせいにできるからです。

 

また金融機関などに対しても、「私たちだけでなく、外部のプロもそう言っています」という錦の御旗を振ることができます。

 

よって、起用するコンサルティング会社は、担当コンサルタントの力量よりも、誰もが認める看板かどうかのほうが重要になってくるため、必然的に単価は高くなります。それでも幹部や社員は自分の懐が痛むわけではないので、「コンサルティング会社への報酬をケチって、安かろう悪かろうになってしまうことは避けるべきです」と主張して、有名どころを起用する方向で進めます。

 

コンサルティング側もそうした背景をわかっているので、あんまり大胆な提案や分析はしません。いままでの経営方針を否定するようなことは「天にツバする」ことになるからです。

 

基本的にいまの方針を肯定しつつ「でもここに一部改善の余地があるかも」という具合にほどよく場を収めることが、次のリピート受注にもつながってくるからです。あるいは「リストラが必要です」という提案によって汚れ役を引き受け、経営陣に恩を売るようなかたちにします。

 

そうして、名のあるコンサルティング会社には億単位でも発注する一方で、そこから独立して個人で活動する安くて有能なコンサルタントがいたとしても、発注はされません。結果をどう出すかは第一の優先順位・判断基準にならないからです。

東大生が実際に学んでいる 戦略思考の授業

東大生が実際に学んでいる 戦略思考の授業

出口 知史

徳間書店

現役東大生を対象に著者が行っている経営戦略の講義が待望の書籍化。 今年で9年連続となる人気講義には、経営者が判断を誤る背景、成果主義の弊害、新興国進出の損得、アウトソース依存による空洞化危機、危ない経営の見抜き…

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