今回は、経営者へのプレッシャーとなる「外国人株主」の存在などについて見ていきます。※本連載は、コンサルタントとして活躍する出口知史氏の著書、『東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、企業の経営戦略に潜む落とし穴を見ていきます。
外国から「次の社長」がやってくる!
法的には経営者(取締役)は、株主総会において過半数の株主に賛成されないと選任されません。
経営者にとって株主は、それまで銀行や取引先だったのに、突然知らない外国人(外国法人に所属する日本人であることも多々ありますが)が登場することによって、利益の持続的増加をはっきりと求められ、経営者には緊張感やプレッシャーが高まることになります。
外国人社長によって「会社のカラー」が一変することも
非上場の中小企業においてはいきなり外国人に株主が代わることは少ないかもしれませんが、一方で、「事業承継」という問題がよく起こるようになりました。
それまでは同族経営であったり、オーナーはよく知った仲の人だったりした会社が、オーナーが高齢になったため、株を引き渡せる親族がいなかった場合に、第三者の会社に株を買い取ってもらったりするような場合です。
そうなると、会社のカルチャーなんて全然知らない人がいきなりやってきますので、緩いカルチャーだった会社が突然、緊張感あふれる会社になることを強いられることもあります。
その他の資金の出し手としては、ベンチャー企業であればベンチャーキャピタルなどがあり、業績不振の企業であれば事業再生を得意とする投資ファンドなどがあります。こうしたプレーヤーは銀行と比較すると短期での業績改善を求めてきますので、いずれにせよ経営者の受けるプレッシャーは大きくなります。
経営コンサルタント
東京大学大学院工学系研究科修了後、経営戦略コンサルティングファームのコーポレイトディレクション、ダイヤモンド社(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』編集部)、産業再生機構、グラクソ・スミスクライン(経営企画部)、メットライフアリコ生命保険(戦略企画部)および複数の投資ファンドに勤務。2007年より慢性的な営業赤字に陥っていた老舗の健康器具メーカーで常勤取締役を務め、1年で恒常的な黒字体質へと変革させ、その後3年連続で成長させた。同様に2015年より老舗の事務機器メーカーにおいても常勤取締役として早期の利益改善を実現させた。
著書に『「困った人」の説得術』(2011年、日本経済新聞出版社)、『論理思考の「壁」を破る』(2006年、ファーストプレス)など。
定期的に東京大学(工学部)、芝浦工業大学等で企業再生、企業の技術戦略と実態、経営者・企業が意思決定を誤るメカニズム、技術者としてのキャリアなどについて講義。その他、日本経済新聞社主催セミナーにおける講演、企業における若手営業マンや管理職候補者向けの研修など、多数実施。
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連載企業の経営・技術戦略の落とし穴〜東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業より