法人設立は、「自社株の相続税対策」にも有効
3.オーナー社長
――3つ目は「オーナー社長」ですが、オーナー社長がプライベートカンパニーを設立することでどのように活用できるのでしょうか?
黒「これも相続に関するものですが、オーナー社長にとって大きな課題のひとつが、自社株の相続です。
自社株は、生前に親族に贈与することで相続税の節税になるのですが、生前に自社株を親族に贈与する場合は、自分の持っている経営権を一部家族に渡すということになるため、経営権の確保に影響が出るのが難点です。
簡単にいうと、一時期メディアで話題になった『大塚家具のお家騒動』のような、経営への悪影響を与えるリスクを考慮する必要があります。
このような場合に、自社株をプライベートカンパニーに移し、その会社の株を贈与するというケースですと、株を贈与された親族は自社株を簡単に換金することができません。また、相続が発生した場合でも、対象となる資産はあくまでプライベートカンパニー(資産管理会社)の株式なので、自社株が社外に流出する可能性も減ります。
プライベートカンパニーを設立することで、経営権を安定的に確保しながら、自社株の相続税対策を進めることができるというメリットがあります。
「株式会社」か「合同会社」か…判断する際のポイントは?
――これまでみてきたように、「自分の会社を持つ」ということにはさまざまなメリットがありますが、一方、デメリットも押さえておかないといけません。一番のデメリットはなんでしょうか。
黒「これはやはり、設立や運営に、一定の費用と手間がかかることです」
――費用は具体的にどのようなものが挙げられますか?
黒「まずかかるのが初期費用です。これは、株式会社にするか合同会社にするかで、設立費用が異なります。
上記のように、株式会社の場合、登録免許税や収入印紙代、公証人手数料などで合計24万2,000円ですが、合同会社の場合合計10万円で済みます。また、株式会社・合同会社どちらであっても収入印紙代は4万円ですが、こちらは電子定款にすれば不要です。この他、司法書士など専門家への報酬も必要になります。
――なるほど。合同会社のほうがコストをかけずに作れそうですね。
黒「はい。ただ、信用力という点では株式会社が勝るので、対外的な信用が必要ということであれば株式会社かなと思います。
――ランニングコストについてはいかがでしょうか。
黒「法人の場合、たとえ決算が赤字でも、法人住民税の均等割分というのは毎年必ず納税する必要があります。また、法人として確定申告が必要となるため、そのための人件費や税理士などへのいわゆる『外注費』も追加で発生する可能性が高いです」
――プライベートカンパニーを設立すべき目安はありますか?
黒「課税所得が900万円を超えると、所得税・住民税合わせて税率が43%となり、法人実効税率の34%より負担が重くなるため、そのあたりを目安に法人の設立を考えるといいでしょう。
反対に、所得税の税率がたとえば10%など、所得が低く税率が低い方の場合は、無理に法人を設立せずに個人のままのほうがお得です」
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黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
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