クレームメールに対し、うまい返信の仕方はありますか
強い言葉が書かれたメールを見ると思わず「クレームがきた」と身構えてしまうかもしれませんが、実際はクレームではなく、ただの相談や質問であることが大半です。言い方が強いだけだと考えましょう。
(例)「買ったばかりの装置が動きません!すぐに使いたいのに困ります。いますぐになんとかしてください。本当に信じられません。」
言語化するのが苦手な人は、感情が高ぶると、どうしても言葉が強くなったり、言葉が足りなくなったりします。言いたいことや、わかってほしい思いが山ほどあるけれど、それを正しく伝えて、受け入れてもらう術を持っていないのです。多くの場合は「困ったからなんとかしてほしい」「助けてほしい」「対応してほしい」という要望を訴えています。だからこそ、やるべきことはただ1つ。お客さまの課題に寄り添い、納得してもらえるようにサポートしましょう。
逆説的ですが、大切なのは「相手を怒らせる方法」を考えることです。何をしたら相手が怒るかを知っていれば、それをやらなければいいだけなので、怒らせることはありません。たとえば、先ほどの質問に次のような答え方をしたら、相手はどう思うでしょうか。
「状況がまったくわかりませんので、もっと詳しく説明してください。これだけだと、こちらも対応のしようがありません。」
配慮や労いはなく、説明不足な相手を責めているようで「自分たちのことを棚に上げて何を言っているんだ」と怒りを倍増させます。送信者が欲しいのは共感と情報(回答)の2つです。
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●共感を伝える例
「このたびは〇〇をご購入いただき誠にありがとうございます。また、大変なご不便をおかけして申し訳ございません。」
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このように状況に対しての部分謝罪を行います。お詫びしている対象を明らかにすることで、状況を的確に把握していることも伝わります。次に、相手が望む状態に導くための質問をします。解決にかかる時間や費用の目安を伝えてもよいでしょう。
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●情報(回答)を伝える例
「〇〇装置が正常に稼働するまでに通常は2〜3日程度かかります。最短での解決方法を探るため、現状をお聞かせいただけないでしょうか。お手数をおかけして恐縮ですが、以下についてお答えください。」
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解決の見通しがつくと安心します。相手と同じ方向を見て、課題を一緒に解決していくのが顧客対応の基本姿勢です。
メールで重大なお詫びをする際は、どう書いたらいいですか
重大なお詫びは、真っ先に電話で伝えたほうがよいでしょう。
相手は状況や原因を詳しく確認したいかもしれません。メールだと事態を軽んじていると受け取られる可能性もあります。どんなに誠意を持って対応しても、手段を選び間違えるとトラブルを招きます。
メールは相手がいつ読むかわかりません。送信と確認の間にタイムラグがあります。すぐにメールを送っても、相手は気がついていなくてひたすら連絡を待っていたら、互いに何も手を打てず、状況が悪化の一途をたどる可能性もあります。相手にストレスを与えないためにも、これ以上、印象を悪くしないためにも、まずは電話での対応が一番です。
そのうえで、相手が電話に出られず、留守番電話や代わりの人に伝言を残したときは、メールも送ります。伝言がいつ伝わるかわからず、先にメールを読むかもしれません。事態を報告するのを急ぐべきなので、あらゆる可能性を考慮して、順番を間違えることなく、速やかに対応しているという事実を残します。メールでは、その前に電話をかけていることを必ず書きます。
メールでお詫びをする際、一般的に入れるべき情報は必須で、そのほかの情報は状況に合わせて判断します。たとえば、家を購入したお客さまから、給湯設備が不調だと連絡があり「今後、給湯設備を設置する際には、そのようなトラブルがないよう再発防止を徹底いたします」と返事をしたら、どうでしょうか。相手からすれば、二度と給湯設備を買うことがないのに再発防止を宣言されても違和感しか残りません。相手の心配や関心がどこにあるのかによって、触れるべき内容は変わります。
次のように論点を絞り、メールに入れるべき要素を整理しましょう。
●コストを意識しているお客さまにはコスト
●納期を意識しているお客さまには納期
●今後の安全性を意識しているお客さまには安全性
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<お詫びメールの構成要素>
●お詫びの言葉
●現状の報告(何が、どうなっているのか)
●原因(なぜ、そうなったのか、その可能性)の説明
●今後の見込みや対応策、懸念事項の説明
●再発防止の宣言
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お詫びをするときには、自己保身の言葉や相手を責める言葉を使わないようにします。運が悪かった、たまたま、といった言葉も相手の神経を逆なでする可能性があります。お詫びメールのゴールは、相手に納得してもらい、信頼を取り戻し、取引を正常な状態に戻すこと。そのためには、謝罪を受け入れてもらう、今後の対応に期待してもらうなどの反応を得たいところです。
平野 友朗
一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事
株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役
1974年、北海道生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学を専攻。広告代理店勤務を経て、独立。2004年、アイ・コミュニケーションを設立。2013年、一般社団法人日本ビジネスメール協会を設立。ビジネスメール教育の専門家。メールのスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールコミュニケーションの効率化や時間短縮による業務改善など、支援実績は多岐にわたる。
著書は『そのまま使える! ビジネスメール文例大全』(ナツメ社)、『仕事ができる人は実践している! ビジネスメール最速時短術』(日経BP)など、本書を含め35冊。